検索は終わらない──AIが連れてきた“併用”の時代
生成AIは「検索を殺す」どころか、検索の隣に座りました。Similarwebの2025年Generative AI Landscapeが示すのは、置き換えではなく補完という現実です。ChatGPTユーザーの約95%が依然としてGoogleも使っています。
AIだけでは完了しない。最後は検索で裏取りをする。そんな行動様式が広がっています。
さらに、GenAI関連サイトの平均月間訪問数は前年比76%増。アプリダウンロードは319%増と急伸しました。発見の入口は増え、回遊の導線は長くなっています。
本稿では、この「併用の時代」をマーケティング視点で解きほぐし、GEO(Generative Engine Optimization)実装まで落とし込みます。
Similarweb 2025 Generative AI Landscapeの要点
“代替”ではなく“拡張”の指標
Similarwebの最新動向から読み取れるのは、AIアシスタントの普及が検索を押しのけるのではなく、発見経路を拡張していることです。ユーザーはAIで要点を掴み、検索で裏を取り、SNSで経験談を探します。行動は分散し、企業は接点設計と計測の再設計を迫られます。
他データで裏を取る:相対化の視点
「生成AI競争の先頭を走るのはどの企業か」という問いに対して、答えはどのデータを見るか、そしてそれをどう解釈するかによって異…
Googleの主力AIチャットボット「Gemini」のウェブドメインである「gemini.google.com」への訪問数が、過去1年間で2倍以上に増加したことが、データ分析企業Similarwebの最新調…
出典: ZDNET Japan
この二つの観測は矛盾ではありません。チャネル別に役割が分化し、“AIで短縮・検索で精度・SNSで妥当性”という三層の行動が定着しつつあるのです。
ユーザー行動の変化:発見から検証へ
短い答え、長い旅路
AIは最初の答えを速くします。ですがユーザーの旅は短くなりません。むしろ「AIで当たりを付け、検索で深掘り、SNSで生活者の目線を確認」という往復が増えています。
ニュースでも同様です。AIの要約で全体像を掴み、原典や他社報道で裏取りし、専門家のスレッドでニュアンスを補います。
世代と浸透度のギャップ
生成AIを使ったことがある人の割合は、2024年6月の15.6%から2025年6月の30.3%へと、1年でほぼ2倍に増加した。
10代の検索行動はChatGPTの利用率が約4割に!全世代を通じてChatGPT利用者の7割が検索エンジンの代替として新たに定着…
若年層ほどAI起点の比率が高い一方で、裏取りとしてのGoogleは欠かせません。ここに「95%併用」という実態が表れます。
メディアとブランドに迫る『GEO』の現実
GEOとは何か
GEO(Generative Engine Optimization)は、AIアシスタントの回答に自社情報を“引用・採用”させる戦略です。SEOのように順位を競うのではなく、AIの回答面に入り込むことを狙います。
そのためには構造化・信頼・鮮度の三点が鍵です。
今日から始める実装チェックリスト
- 構造化:FAQ / How-toを見出し・箇条書きで簡潔化。Schema.org、構造化データ、OGPの整備。
- 信頼の印:一次情報(調査、数値、ホワイトペーパー)を公開。著者・監修・出典を明記。
- 鮮度維持:更新日と変更履歴を露出。RSS/サイトマップでクロールを促進。
- 引用可能性:短文で“持ち運べる一文”を作る。図版の代替テキストを丁寧に。
- 配信面:ナレッジベースやAPI、Press Kitを用意。AIが取り込みやすい形に。
- ブランド固有名詞:同義語・誤記ゆれをガイドライン化し、用語集ページで正規化。
国内でも広告・メディア領域でGEO研究が進んでいます。生活者行動に寄り添い、“答えの面”で存在感を持つことが、次の競争軸になります。
チャネル別の役割分担:Google・AI・SNS
三位一体のカスタマージャーニー
- AI(ChatGPT/Gemini/Claude):要約、要件定義、比較軸の抽出。最初の仮説作り。
- 検索(Google):原典確認、網羅探索、逆引き、最新性の担保。
- SNS/コミュニティ:体験談、ベストプラクティス、暗黙知の共有。
Similarwebの観測でも、AI単体の伸びに加え、検索・SNSとのトライアングル消費が強まっています。特にGoogleのAI機能(AI Overviews等)やGeminiの伸長は、チャネル内での“AI内燃化”を示唆します。
実務での使い分けテンプレート
商品リサーチ(消費財)
- AI:用途別の選定軸を生成(価格帯・成分・レビュー観点)。
- 検索:公式・比較記事で仕様確認、在庫と価格を確認。
- SNS:使用感・失敗談・長期レビューをチェック。
B2B導入検討(SaaS)
- AI:RFP雛形、評価項目、ROIモデルを作成。
- 検索:導入事例・競合比較・セキュリティ白書を読込。
- コミュニティ:実ユーザーの運用Tips、移行の落とし穴を収集。
ニュース消費
- AI:要点と争点を抽出、賛否の論点整理。
- 検索:原典・公的資料・反証記事で裏取り。
- SNS:専門家スレッド・一次当事者の声でニュアンス補正。
リスクと測定:AI時代のアトリビューション再設計
“見えない流入”への備え
AI経由は参照元が欠落しがちです。回答面からのクリックはリファラ不明として計測されることも多い。そこで次を推奨します。
- サーバーサイド計測:UTM標準化、直帰短縮・再訪増の行動指標で代理計測。
- コンテンツ単位のSOA:Share of Answer(回答面への採用率)を定義し、検証用クエリとスナップショットでトラッキング。
- ブランドリフト:指名検索、用語検索、FAQ流入の増減をAIコンテンツ公開前後で比較。
- オンサイト調査:「どこでこの情報を知ったか?」の< b>AI選択肢を設け、母集団推計。
GeminiやChatGPTの利用が伸びる局面では、Google内のAI機能とも重なります。“AIと検索の重複”を前提に、重複除去したKPI設計が要諦です。
まとめ:SEOの次はGEO、でも“AND”で考える
GenAIはトラフィックの総量を押し上げつつ、経路を分散させました。Similarwebの示す76%増(訪問)と319%増(アプリ)は変化の大きさを物語ります。
それでも95%の併用が示すのは、AIは検索の代替ではなく補完という事実です。
これからのブランドは、検索面だけでなくAIの回答面を取りに行くべきです。GEOで“引用される設計”を徹底し、Google・AI・SNSの三位一体でファネルを編み直す。
答えはひとつの面に収まりません。だからこそ、ANDの発想で勝ち筋を作りましょう。

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