OpenAIは、新モデルGPT-6.1 Terraについて「Claude Opus 5.5より1タスクあたり約9分の1の費用」と説明しています。根拠は、トークン効率が3倍以上で、トークン単価が4分の1だから。ところが、この2つを掛けると12倍以上になり、9倍とは合いません。
単価の差が、使い方によって4倍より小さくなるのが一因です。Terraには、入力が27万2,000トークンを超えたリクエストの料金が上がる条件があり、Opus 5.5にはありません。私のClaude Codeの1か月分のログに両方の単価を当てはめると、差は4倍ではなく3.1倍でした。
Terraが安いモデルであることは確かです。ただ、長い会話を続けるエージェントで使うなら、見るべきは定価よりもこの条件です。以下、発表の要点、単価の比べ方、ログでの試算、向く作業と試し方を順に示します。
GPT-6.1 Terraは、Solの半額で画面操作と文章に強いモデル
OpenAIは10月26日にGPT-6.1 Terraを発表しました。図面や画面を読み取る視覚推論、パソコンの画面操作、自然な文章を得意とする高速なモデルです。APIの標準料金は、GPT-6.1 Solや旧版のGPT-5.6 Terraの半額です。発表では、届いた請求書を読み取って会計ソフトに入力するような、大量の定型作業を例に挙げています。
性能はOpenAIの自社評価ですが、仕事の画面操作を測るAgents’ Last Examでは、推論の強さを中程度にした場合に最上位のGPT-6 Astraと並びました。誤りを誘う質問での誤答率は、推論を弱くした設定で、旧版GPT-5.6 Terraの53.6%から16.7%に下がっています。一方で、最も複雑なコーディングはSolやAstraのほうが向くと、OpenAI自身が書いています。
モデルの仕様では、コンテキストは105万トークン、1回の入力は最大92万2,000トークン、出力は最大12万8,000トークンです。推論の強さはnoneからmaxまでの6段階で、既定はmediumです。ChatGPTではPlus・Pro・Enterprise・EduのChatGPT WorkとCodexで使え、APIのモデル名はgpt-6.1-terraです。
単価は4分の1。ただし27万2,000トークンを超えると2倍前後に縮む
Opus 5.5と、100万トークンあたりの単価を並べます。ClaudeはAnthropicの料金表、Terraはモデルの仕様ページの値です。
| 項目 | Terra | Opus 5.5 | 差 |
|---|---|---|---|
| 入力 | 1ドル | 4ドル | 4倍 |
| キャッシュ読み取り | 0.05ドル | 0.20ドル | 4倍 |
| キャッシュ書き込み | 1.25ドル(30分保持) | 5ドル(5分)/8ドル(1時間) | 4〜6.4倍 |
| 出力 | 5ドル | 20ドル | 4倍 |
| 27万2,000超の入力・読み取り | 2ドル・0.10ドル | 4ドル・0.20ドル | 2倍 |
| 27万2,000超の出力 | 7.50ドル | 20ドル | 約2.7倍 |
通常のリクエストなら、どの項目もほぼ4分の1です。ところがTerraは、入力が27万2,000トークンを超えると、そのリクエスト全体の入力とキャッシュが2倍、出力が1.5倍になります。Claudeの料金表には、Opus 5.5を含む4.6以降のモデル(Haiku 5.5を除く)は100万トークンまで標準料金と書かれています。長いリクエストでは、差が2〜2.7倍まで縮むわけです。
「9倍」の残りの食い違いについて、OpenAIは内訳を公表していません。評価に使った作業の長さも分からないので、この割増だけで説明できるとは言えません。それでも、「単価4分の1」がどの使い方にも当てはまるわけではないことは、料金表から確かめられます。
Claude Codeのログに当てはめると、差は3.1倍だった
長い会話を続けるエージェントでは、どれくらいのリクエストが27万2,000トークンを超えるのか。私のMacに残っているClaude Codeのログで数えました。期間は9月27日〜10月25日、Opus 5.5の6,268リクエストで、このブログの調査・執筆・投稿の作業です。読んだのはトークン数の欄だけです。集計の方法は前回の記事と同じです。
1リクエストの入力の中央値は15万4,781トークンで、最大は78万9,082トークンでした。27万2,000トークンを超えたのは1,641件、全体の26.2%です。会話が長くなるにつれ、後半のリクエストほど条件を超えていきます。
同じトークン数と出力量のまま、両方の単価で計算した結果です。Terraは、OpenAIの既定である30分のキャッシュ保持で計算しました。
- Opus 5.5(記録どおり):680.54ドル
- Terra(割増を含む):218.57ドル(Opus 5.5の約3.1分の1)
- Terra(割増がないと仮定):151.88ドル(約4.5分の1)
割増の対象は全体の4分の1ほどですが、Terraの費用の63.5%はこの割増対象のリクエストから生じています。長いリクエストは読み取るトークンも多いからです。割増によって、Terraの費用は44%増えました。割増がない場合に4倍を超えるのは、Opus 5.5のキャッシュ書き込みが1時間保持(入力の2倍)で記録されているためです。
この試算は単価だけの比較で、品質や成功率は含みません。Terraが同じ作業をOpus 5.5より少ないトークンで終えるなら差は広がり、多く使えば縮みます。なお、12時間保持のキャッシュ(書き込みは入力の2.5倍)に替えると273.53ドルになり、私の使い方では30分保持のほうが安く済みました。
推論を最大にすると、安さが消えることがある
もう一つの変数は推論の強さです。Qiitaの比較記事は、X上の利用者の報告をもとに、推論を最大にしたTerraはSolの約1.7倍の出力を書くため、単価が半分でも1タスクの費用はほぼ同じになると整理しています。低〜中程度の設定では3〜4倍有利だったとしています。
私が試したわけではありませんが、筋の通る話です。出力は入力の5倍の単価なので、推論で長く考えさせるほど出力の費用が増えます。Terraの安さを生かすなら、まず既定の設定で試し、足りない作業だけ上げるのがよいと私は考えています。既定はAPIではmedium、Codexではlowです(後述)。
Terraに回すなら、画面と書類の定型作業
OpenAIの説明と単価の構造から、私なら作業を次のように分けます。
- Terraに回す:請求書や申込書を読んでシステムに入力する、スクリーンショットを見て画面を操作する、メールや提案書の下書き、図面や表の読み取り
- SolやAstraに残す:設計の判断を伴うコーディング、多くの手順を自律的に進める長いエージェント作業
- 会話を短く保つ:1回のリクエストが27万2,000トークンを超えないよう、作業ごとに会話を分け、資料は必要な部分だけ渡す
3つ目は見落としやすい点です。Claude Codeに慣れた人ほど、1つの会話で長く作業を続けがちです。Terraでは、その習慣が割増に直結します。APIで使う場合は、応答の使用量欄で入力トークン数を確かめ、27万2,000に近づいたら会話を区切ってください。
CodexとAPIで試すには
ChatGPTのPlus・Pro・Enterprise・Eduなら、プランの利用枠の中でCodexとChatGPT Workから使えます。Codexの公式説明によると、モデルは対話中の/modelで切り替えるか、起動時に--modelで指定します。公式の例はcodex --model gpt-6.1-solで、モデル名はAPIと同じ形式なので、Terraなら次のようになります。
codex --model gpt-6.1-terra
毎回使うなら、設定ファイルconfig.tomlに次の1行を書きます。推論の強さはmodel_reasoning_effortで変えられます。
model = "gpt-6.1-terra"
手元のCodex CLI 0.164.0が10月27日に取得したモデル一覧でも、Terraの指定名はgpt-6.1-terraでした。この一覧では、Codexでの推論の既定はlow(low〜maxとultraの6段階)、コンテキストは50万トークンとなっています。50万トークンまで使えるので、APIキーでCodexを使うと27万2,000トークン超の割増に届く余地があります。APIキーで使う場合、利用できるモデルはAPIの組織設定に従います。
私はこの記事のためにTerraを実際には呼び出しておらず、設定は書式を確認しただけです。
Terraは、短い定型作業を大量に回す用途では、定価どおり4分の1近くまで安くなるはずです。一方、長い会話のエージェントでは、私のログでは3分の1程度でした。乗り換えを決める前に、自分の作業を数件、同じ推論設定で両方に流し、1タスクあたりの費用と成功率を比べてください。Claude Codeを使っているなら、前回の記事のスクリプトで、自分のリクエストの長さと費用の内訳を先に確かめておくと判断が早くなります。

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