6倍の衝撃、国内生成AIアプリが動いた
日本の生成AIアプリ市場が、一気にスケールしました。フラーが公開した最新の市場調査レポート(2025年6月版)によると、2024年6月から2025年6月の1年間で国内MAUは約6倍、利用時間は約23倍に増えています。公開日は2025年9月3日。データソースはアプリ分析サービス「App Ape」です。
レポートは、ユーザー層の中心が20代男性であること、そしてChatGPTに加えてClaudeやココナラなど複数アプリを併用する動きが広がっている点を強調しています。通勤時間や夜間帯の“ながら利用”の増加も、利用時間急伸の背景にあります。
生成AIアプリ市場、1年間で急成長。MAUは約6倍、利用時間は約23倍に
一次情報は以下でも確認できます。プレス発表のダイジェストや関連記事がまとまっています。フラー公式/CreatorZine/FNN
要点をつかむ:市場の“現在地”
数字が示す急伸の実相
今回のレポートで最も象徴的なのは、MAUと利用時間の伸び幅の差です。ユーザー数の拡大に加え、1ユーザーあたりの滞在や反復利用が濃くなっていることを示します。生成AIが“たまの便利ツール”から“日々のアシスタント”へと役割を変えつつある段階だと読み取れます。
- 期間:2024年6月 → 2025年6月
- MAU:約6倍
- 利用時間:約23倍
- 主要ユーザー:20代男性が中心
- 行動の特徴:ChatGPT・Claude・ココナラ等の複数アプリ併用
複数アプリ併用は、生成AIを「用途別に使い分ける」成熟行動のサインです。文章生成はChatGPT、長文解析や厳密な指示はClaude、スキル型の発注やテンプレ活用はココナラ、というように役割が分かれ始めています。
伸びを牽引したアプリと“使い分け”のロジック
ユースケースごとに最適解が異なる
生成AIは“万能”ではなく、“最適”が用途ごとに変わります。対話の自然さや拡張機能の豊富さで選ぶならChatGPT。長文要約や厳密な思考ステップ、PDFやコードの吟味ならClaude。制作を人とAIで補完したいならココナラとAIツールの併用が合理的です。
この結果、1つのアプリに滞在し続けるよりも、課題の性質に合わせてアプリを切り替える行動が増えます。レポートが示す利用時間の爆発的伸びは、単純な“ながら利用”だけでなく、こうした“タスクの複層化”によっても押し上げられていると考えられます。
- 調査・要約:ニュースや論文の要点抽出 → Claude
- 草稿・ブレスト:アイデア出しから構成案 → ChatGPT
- 制作・発注:バナー、ロゴ、台本の発注やテンプレ購入 → ココナラ
参考:CreatorZineの要約記事/FNN(PR TIMES転載)
誰が使っているのか:20代男性中心の深掘り
“先行 adopters”の輪郭
中心は20代男性。スマホネイティブで、学習や副業、ポートフォリオ作りの効率化に敏感な層です。SNSでの即時共有やテンプレの二次利用も多く、結果としてアプリ横断の学習曲線が急速に立ち上がります。
一方で、30代以上も確実に伸びています。仕事の自動化や資料作成、営業提案の草稿化など、業務適用の“実益”が見えたことで、腰の重かった層も動きました。レポートの“利用時間23倍”は、若年のみならず職場ユースの定着が寄与していると見るのが自然です。
この分布は、近い将来に属性の平準化が起きる前兆でもあります。教育、社内ガイドライン、ナレッジ共有の質が、普及の第二波を左右します。
利用時間が23倍になった理由を読み解く
“常時アシスト”化とモバイル最適の進行
生成AIの価値は、回答精度だけではありません。手元のスマホで、短い隙間時間に反復できること。音声・画像・ファイルを横断して投げ込めること。この2点が、アプリの“常時アシスト化”を進めました。
さらに、対話の履歴やツール連携が整理され、課題に戻れる設計が一般化。推敲や追加指示の往復が増えれば、当然ながら滞在時間は伸びます。フラー公式の告知や、今年上半期の関連記事群からは、こうした“日常インフラ化”の空気が濃く読み取れます。
この動きは検索行動にも波及しています。AIサービス経由の流入増や、AI概要の表示率上昇を示す分析も複数報告されています(例:Ahrefs Japan、PLAN-B)。
ビジネスに効く実践アイデア:いま何をすべきか
アプリ事業者・デジタル担当向けの打ち手
市場が拡大した時、勝敗を分けるのは“導線”です。用途別に最適なオンボーディングを用意し、ユーザーがすぐ成果を出せるようにする。次に、アプリ間をまたいだタスク整理の“ハブ”を提供する。これだけで、定着率は違います。
- ファースト7分の設計:用途プリセット、ワンクリックで試せるプロンプト
- 資産化:プロンプトと結果をテンプレ化し、共有・再利用を容易に
- 相互運用:メモ、日程、ファイルと双方向連携。貼るだけで提案生成
- 計測:MAUより“成功体験数”の可視化。週1以上の成功をKPIに
マーケティングでは“成果から逆算”が効きます。検索広告やSNS出稿だけでなく、AI内のプラグイン・拡張で“発見”される導線を設計するのが2025年のポイントです。
導入・使い方のヒント:個人もチームも今日から回せる
スモールスタートの黄金パターン
いきなり全社展開は不要です。3つのタスクでROIを証明しましょう。企画の草稿化、ミーティング議事要約、定型メールの自動生成。この3点で1週間回すだけで、効果と課題が見えます。
- 下ごしらえ:自社の用語集・過去資料の要約を最初に共有
- プロンプト設計:目的、制約、出力形式の3点を簡潔に
- レビュー運用:100点を狙わず、70点を速く。人が最終責任
- ガバナンス:個人情報・顧客データの取り扱いを明文化
アプリの使い分けも明確に。発想と草稿はChatGPT、精査と要約はClaude、制作リソースの補完はココナラ。この三位一体で、生産性の底上げが最短で実現します。
残る課題と次の焦点
“質の担保”と“コストの見える化”
生成AIは速いが、常に正確とは限りません。出力の根拠や参照元を確認できる設計が鍵です。出典リンクの自動付与、検証プロセスの半自動化、社内ナレッジとの紐づけが、次の競争軸になります。
また、利用時間が伸びるほどコストも積み上がります。“成果あたりコスト”をダッシュボードで可視化し、モデル選択やオンデバイス処理の比率を最適化する。ここに手を入れた企業から、利益率が安定します。
音声ネイティブ、マルチモーダル、エージェントの実務適用も進みます。アプリは単体で完結せず、仕事の“前後工程”まで面倒を見る世界へ。今回のレポートは、その入口に市場が立ったことを示しています。
参考リンク
- PR TIMES|生成AIアプリ市場、1年間で急成長。MAUは約6倍、利用時間は約23倍に
- フラー公式ニュース|生成AIアプリ市場調査レポート(2025年6月版)
- CreatorZine|フラー調査ダイジェスト
- FNNプライムオンライン|PR TIMES転載
- Ahrefs Japan|AIサービスからの流入増加の現状
締めくくり:生成AIは“道具”から“相棒”へ
MAUは約6倍、利用時間は約23倍。数字は、生成AIが“ときどき使う便利ツール”から“常時そばにいる相棒”へ変わったことを語ります。中心は20代男性。ただし、現場で働くすべての人にとっての基本インフラへと、いま移行中です。
用途に応じたアプリの使い分け、成果から逆算した導線設計、ガバナンスとコストの見える化。今日できることは多いです。次の一年、あなたの組織の“AI活用の当たり前”を更新していきましょう。
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