国産生成AIが熱い理由は“現場発”の課題感
ChatGPTやGeminiの衝撃からわずか2年。
いま日本企業が生成AIに寄せる期待は「言語の壁を超えた業務改革」と「日本市場特有の制約への最適化」です。
海外発モデルの精度は高いものの、専門用語や商習慣、法規制を完全に咀嚼しきれない——そこに国産モデルの出番があります。
2025年6月現在、資金調達とPoCのサイクルは加速し、生成AIを核にした新規事業が大手とスタートアップ双方で噴出。
プレーヤー同士の協業も活発で、エコシステム全体が“日本発ソフトウェア輸出”を志向し始めました。
一気に把握! 注目の18社リスト
- NTTデータ/DoCoMo – 日本語特化LLM「tsuzumi」で公共・金融案件を推進
- NEC – 生成AI基盤「cotomas」を発表、セキュアクラウドに強み
- 富士通 – 生成AIプラットフォーム「Kozuchi」&200社を越える実証実験
- ソフトバンク – LLM研究拠点SB Intuitionsを設立、1兆パラメータ級を目指す
- Sony Research – 音楽生成AI「Flow Machines」の商用版を世界展開
- LINEヤフー – 独自LLM「HyperCLOVA X JP」で広告・ECに実装
- Preferred Networks – 言語・画像統合モデルを製造DXへ横展開
- rinna – 「rinna LLM 14B」をOSS公開しコミュニティを牽引
- Sakana AI – 進化的アルゴリズムで省電力モデルを自動生成
- ELYZA – コンサル型生成AI導入支援で行政・メディア案件が急増
- オルツ (alts) – パーソナルAI「al+」で個人向けSaaSを拡大
- Laboro.AI – オーダーメイドLLM「Custom AI」を製造業へ
- Spiral.AI – マルチモーダルAPIで国内トップクラスの推論速度
- Reazon – ゲーム・広告向け生成AI SDKを提供
- AI inside – 内製LLM×OCRで帳票DX、香港にも進出
- ABEJA – 小売データと生成AIを掛け合わせた需要予測がヒット
- Turing – 開発者向け“AIエージェントOS”をβ公開
- FastLabel – データ生成&アノテーション自動化で基盤モデル学習を支援
大手企業が描く“ガバナンス×生成AI”の青写真
コンプライアンスとセキュリティは日本企業最大の関心事。
NTTデータやNECは金融APIの知見を生かし、機密性Pマークに準拠した内部LLM環境を整備しています。
富士通はKozuchi上でソースコードを暗号化して学習させ、外部への情報漏えいを技術的に遮断。
興味深いのは、生成AI人材を自社で育成する動き。
ソフトバンクは2,000人規模のエンジニアを対象に「Generative AI Bootcamp」を実施しました。
LINEヤフーはPrompt Libraryを社内Wikiに統合し、社内プロンプトの二次利用率が70%を突破しています。
“生成AIはPoCではなく本番運用フェーズへ” ― SHIFT AI TIMES
スタートアップこそ“ニッチ×高速”で差別化
スタートアップの武器は“尖った課題設定”。
たとえばSakana AIは省電力と軽量化に全振りし、推論コストを従来比87%削減。
rinnaはキャラクター会話に特化し、SNS連携APIがゲーム運営会社の定番ツールに。
市場が成熟するほど、ユースケース特化の価値が増します。
Reazonはゲーム広告キャッチコピーを自動生成しCTRを30%向上。
Turingは複数APIを束ねた“エージェントOS”で社内Botのライフサイクルを短縮しました。
導入ステップとユースケース早見表
1 目的整理
・既存業務の自動化か、新サービス創出かを明確に。
・社内の規程類(情報セキュリティ・著作権)をレビュー。
2 パートナー選定
・セキュアなオンプレ対応が要件ならNEC・NTTデータ。
・生成内容をOSSでカスタマイズしたい場合はrinna・Sakana AIがおすすめ。
3 PoC→本番
・スモールスタートはSlack BotやFAQ自動化が鉄板。
・KGI/KPIを「回答時間」「転記作業削減率」など定量化すると投資判断が容易に。
資金調達・提携ニュース最前線
- 2025年2月 Sakana AIがシリーズBで80億円を調達。リードはSequoia China。
- 2025年3月 Preferred NetworksがマイクロソフトとAzure上でLLM共同開発を発表。
- 2025年4月 Laboro.AIが日立との資本業務提携を締結。
- 2025年5月 AI insideが香港子会社を設立しASEAN展開を本格化。
- 2025年6月 NTTと富士通が政令市向け自治体クラウドに共同でLLM機能を実装。
この流れは“国際共創”へ広がり、日本発モデルの輸出が現実味を帯びてきました。
日本発生成AIの勝ち筋
結論から言えば、ドメイン特化×倫理準拠が世界で評価される鍵。
製造業の高精度データや行政手続きの複雑さは、日本が長年蓄えてきたアセットです。
そのうえで、OSSコミュニティとの両輪が不可欠。
rinnaやSakana AIのOSS公開は、国際的な透明性・リスクコントロールの土台になります。
ガバナンスを担保しながらイノベーションを解放する——このバランス感覚こそ、日本企業の独自優位性と言えるでしょう。
まとめ:2025年は“選定と実装”が分水嶺
今回紹介した18社は、いずれもPoCを卒業し、ROIを証明し始めたプレーヤーばかり。
ユーザー側に求められるのは「ニーズの切り分け」と「統合アーキテクチャ設計」です。
海外モデルに振り回されるのではなく、国産生成AIを組み合わせることで、“現場が本当に使えるAI”が完成します。
2025年、この潮流を捉えた企業こそ、次の10年をリードすることでしょう。
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