海外の取引先との定例で、相手の英語を聞き取るのに必死で、自分の発言を考える余裕がない。そんな会議で、相手の声が数秒遅れで日本語になって聞こえるようになります。Googleは10月22日、Google Meetの音声翻訳を63言語に広げたと発表し、これまで対象外だった日本語も入りました。
ただし、誰の会議でも使えるわけではありません。可否を決めるのは、参加者全員ではなく会議を主催する人のプランです。基本のプランでは1会議90分まで、録画やライブ配信、会議室のMeet専用機器から話した声は翻訳されません。
私の見立てでは、主催者がBusiness Standard以上の会社なら、追加費用なしで今日から試す価値があります。一方、Business Starterの会社が音声翻訳のためだけにプランを上げるかは、英語の会議が月に何回あるかで判断することになります。以下、会議の種類ごとに使えるかを整理し、料金と、日本語のヘルプを見ると迷う設定手順を順に見ていきます。
何が変わったか:言語ペアを1組選ぶ方式から、聞き手ごとに選ぶ方式へ
これまでの音声翻訳は、英語とスペイン語など一部の言語の組み合わせに限られ、会議全体で1組の言語ペアを設定する方式でした。今回の更新では、Gemini 3.5 Live Translateを使って63言語の任意の組み合わせを翻訳します。話されている言語は自動で判定され、聞き手はそれぞれ自分が聞きたい言語を選びます。
つまり、日本語・英語・韓国語の話者が1つの会議にいても、各自が自分の言語で聞けます。Meetの英語版ヘルプにある対応言語の一覧を数えると63言語で、日本語、韓国語、中国語、広東語が含まれていました。翻訳された声は話者の声に似せて作られ、字幕も翻訳後の言語で表示されます。
展開は段階的です。新機能を早く受け取る「即時リリース」の組織は10月22日から1〜3日、「計画的リリース」の組織は11月2日から最大15日かけて表示されます。自社がどちらかは、管理コンソールの[アカウント]→[アカウント設定]→[設定]にあるリリース設定の「新機能」で確かめられます。
使えるかどうかは会議の種類で決まる
公式発表とヘルプの条件を、日本の職場でよくある会議に当てはめると次のようになります。
| 会議 | 使えるか | 理由・条件 |
|---|---|---|
| 自社主催の英語の定例(60分) | 使える | 主催者がBusiness Standard以上なら、社外の参加者も使える |
| 取引先が主催する会議 | 相手次第 | 予約した会議は主催者のプランで決まる |
| 1対1の通話 | どちらかが対象なら使える | 参加者の少なくとも1人が対象プランであればよい |
| 2時間の研修 | 90分まで | 基本プランとGoogle AI Proは1会議90分。8時間はGoogle AI Ultraなど上位のプラン |
| 会議室の専用機器から参加 | 聞くだけ | 会議室で話した声は相手に翻訳されない |
| 録画して後で共有 | 録画に残らない | 録画は対象外。残すなら翻訳字幕を録画する |
| ウェビナー・ライブ配信 | 使えない | ライブ配信は対象外 |
| 電話で参加する人がいる | その人は使えない | 電話参加と他社サービスとの相互接続は対象外 |
見落としやすいのは会議室の行です。会議室にMeet専用の機器を置き、そこから複数人で参加する会社は多いはずです。この場合、会議室の人は相手の英語を日本語で聞けますが、会議室で話した日本語は相手側に英語で届きません。相手に英語で伝えたい説明は、各自のパソコンから参加している人が話す運用にしておく必要があります。
90分の上限も、1時間の定例なら問題になりませんが、半日の研修や長いワークショップでは足りません。上限に達したときの画面上の挙動は、発表にもヘルプにも書かれていませんでした。
18歳未満の参加者、クライアントサイド暗号化を使う会議、アダプティブオーディオ(日本語ヘルプの表記は「音声統合」)を使っている場合も対象外です。
料金:Starterの会社は音声翻訳も翻訳字幕も使えない
対象は、Google WorkspaceのBusiness Standard・Business Plus・Enterprise Standard・Enterprise Plus・Frontline Plus、個人向けのGoogle AI ProとGoogle AI Ultraなどです。一番安いBusiness Starterは含まれません。
代わりの手段として思い浮かぶのが、以前からある翻訳字幕です。日本語にも対応していますが、翻訳字幕のヘルプを見ると、こちらの対象もBusiness Standard以上でした。Starterの会社には、Meetの標準機能だけで翻訳する手段はありません。
Google Workspaceの料金ページの表示額(10月23日確認、税別、ユーザー1人あたり月額)は、Starterが800円、Standardが1,600円、Plusが2,500円です。StarterからStandardに上げると、差額は1人あたり月800円になります。
- 10人の会社が全員をStandardにする場合:800円 × 10人 = 月8,000円(年96,000円、税別)
- 30人の場合:800円 × 30人 = 月24,000円(年288,000円、税別)
ページには「1年契約なら16%お得」との表記と、初回3か月50%オフのキャンペーンも出ています。上の計算はキャンペーン前の表示額によるもので、契約形態による単価の違いは含めていません。組織内の一部の人だけを上位プランにできるかも、契約条件によるため今回は確かめていません。
個人やフリーランスで、自分が主催する会議で使いたい場合は、Google AI Pro(月2,900円)も対象です。ただし1会議90分の上限は同じです。
Standardには音声翻訳のほかにも、GmailやドキュメントでのGeminiなどが含まれます。月800円の差額を音声翻訳だけで回収するかで考えるより、英語の会議が月に数回以上ある部署なら、他の機能も合わせて検討するのが現実的だと私は考えています。会議内容を記録として残す必要がある場合は、録画に翻訳が残らない点を踏まえ、文字起こしサービスの料金も比べておくとよいでしょう。
設定手順:日本語のヘルプはまだ旧方式のまま
10月23日の時点で、日本語版のヘルプは「言語の組み合わせを選び、すべての参加者に対して翻訳を有効にする」という旧方式の手順のままでした。新しい方式は、英語版ヘルプに書かれています。画面が日本語ヘルプの説明と違っても、故障ではありません。
英語版ヘルプによる新しい流れは次のとおりです。ボタン名は英語版の表記で、日本語の画面では訳語が異なる可能性があります。
- 会議中に字幕のボタンにポインタを合わせ、「Translate speech」を選ぶ
- 翻訳を聞きたい言語(日本語など)を選び、「Next」を押す
- 自分の発言も相手に翻訳させる場合は「Translate me」を押す
3つめが重要です。ヘルプは、自分の発言を他の人向けに翻訳させるには「Translate me」を押すよう案内しています。日本語ヘルプも、翻訳されない理由の1つに「参加者が翻訳に同意していない」を挙げています。英語で聞く相手がいるのに日本語の発言が翻訳されないときは、まず話す側がこの設定をしているかを確かめてください。
管理者の作業は基本的にありません。管理者向けヘルプによると、管理コンソールの「Apps > Google Workspace > Google Meet > Gemini settings」(英語版の表記)にある音声翻訳の設定は既定でオンです。ただし、Gemini for Workspaceの設定自体をオフにしている組織では使えません。社内で生成AIの利用を止めている会社は、この設定を確認してください。
使う前に知っておきたい限界
翻訳は数秒遅れて届きます。ヘルプは、話者のタイルに出る翻訳中の印が消えてから応答するよう勧めています。相手の発言が終わった直後にかぶせて話すと、翻訳を聞き終える前に会話が進んでしまいます。司会役が「翻訳が終わるまで一呼吸置く」とあらかじめ伝えておくと、会議の進み方が安定するはずです。
日本から利用できるかについては、一点だけはっきりしない部分があります。ヘルプは、使えない理由の1つに「機能を利用できない地域にいる」ことを挙げていますが、対象地域の一覧は公開されていません。対応言語に日本語が入ったことは確認できても、日本からの接続で確実に使えるとは、公式の文書からは言い切れません。
私自身は対象プランのアカウントを持っていないため、翻訳の精度や遅れの長さは試していません。上の内容は、10月23日に確認した公式発表とヘルプに基づいています。契約の交渉や細かい数字の確認など、聞き違いが許されない場面で人の通訳の代わりになるかは、自社の会議で試してから判断するのが安全です。
まず社内で15分の試験会議を開く
主催者がBusiness Standard以上なら、社内の2人で15分の会議を開き、片方が英語、片方が日本語で話してみてください。翻訳が出るか、話す側の「Translate me」が必要か、遅れが何秒か、日本からの接続で問題がないかを一度に確かめられます。計画的リリースの組織なら、表示されるのは11月2日以降です。
そのうえで、本番の取引先との会議では、主催をどちら側が持つかを決めておくのが一番の準備になります。相手が主催する会議では、こちらのプランに関係なく、相手のプラン次第で使えないことがあるからです。

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