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英CMA、Googleの生成AI検索(AI Overviews)を巡る新ルール案

目次

検索が変わる、その前に整えるべき“ルール”

検索はリンクの羅列から、AIが要約して導く体験へ。
イギリスの競争当局CMAが、この新しい検索像にルールを持ち込もうとしています。
焦点はGoogleの生成AI検索「AI Overviews/AI Mode」と、出版社の権利保護の両立です。

ポイントはコンテンツ利用のオプトアウト権透明性
AIがまとめても、情報の源泉であるサイトが主導権を失わない仕組みが求められています。
検索の利便性か、クリエイターの持続性か。
そのバランスを取りに行く動きです。

CMAの狙い:出版社に“選択権”を、検索に“説明力”を

新ルール案の骨子

英国CMAは、Google検索のAI機能に対し、出版社が自社コンテンツの扱いを制御できる新ルール案を公表しました。
国内で9割超のシェアを持つGoogleに対し、デジタル市場・競争・消費者法(DMCCA 2024)に基づく行動規範を課す構えです。
報道では、次の4領域が柱とされています。

  • コントロール付与:AI OverviewsやAI Modeでの利用、検索外のAI学習への利用からオプトアウトできる選択肢
  • 透明性・アトリビューション:AI結果での適切な出典表示と説明責任
  • 公平なランキング:自社サービス優遇の抑制やシグナルの公正化
  • 選択画面・データ移行:検索や広告の選択肢提示とデータポータビリティ

要点を端的に示す引用がこちらです。

CMA wants publishers to be able to opt out of their content being used to power AI Overviews and AI Mode, or to train AI models outside of Search.

出典:Gadgets360

日本語の整理も参考になります。
Media Innovationは、今回が初の行動規範案で、オプトアウトと透明性の確保が中心だと解説しています。
Media Innovation

提案の核心:オプトアウトと透明性の再設計

“見られる”から“使われる”への転換に歯止め

従来の検索は、クローリングしてインデックスし、ユーザーがクリックする前提でした。
AI Overviewsでは、複数の情報源を要約して上位に提示し、クリック前に価値が成立します。
この構造変化は、出典サイトの流入に直結するため、利用ルールの明確化が急務でした。

CMAの案は、次のような再設計を迫ります。

  • 粒度のあるオプトアウト:検索インデックスは許可、AI要約は不許可、学習は全面不許可などの細分化
  • 出典ラベリング:AI結果でのリンク露出の明確化と、要約に採用された根拠の説明
  • 優遇の抑止:自社サービスや特定ソースの過剰優遇をチェックする監督枠組み

つまり、AI検索の“利便性”を維持しながら、出典側の選択権と可視性を保証する仕組みに舵を切る提案です。

Googleの現行仕様とギャップ:何が足りないのか

robots.txtでは足りない場面

Googleは開発者ドキュメントで、AI OverviewsやAI Modeに特別な最適化は不要とし、検索におけるAIはSearchに統合されていると説明しています。
また、サイト管理の主手段はGooglebot向けrobots.txtだと明言しています。

AI is built into Search … which is why robots.txt directives for Googlebot is the control for site owners to manage access to how their sites are crawled for Search.

出典:Google Search Central

しかし、CMAが求めるのはAI要約での利用検索外のモデル学習に対する個別・明示のオプトアウトです。
現行のロボッツ制御は「クロールの可否」が中心で、用途別の不許可までは網羅しきれていません。
このギャップこそ、今回の協議の主戦場になります。

Google側の機能進化(AI Modeの一般提供など)も進み、検索体験は高度化しています。
公式ブログによれば、AIによる探索はリンクと併走し、深掘りを促す設計です。
ただしコントロールの粒度は、規制側の要求と接続する追加設計が必要になりそうです。

出版社・メディアの実務:いま備える運用チェックリスト

“来るかもしれない”オプトアウトの前に

最終ルールが確定する前でも、準備は進められます。
以下は現時点での実務対応の指針です。

  • ポリシー棚卸し:自社のAI利用方針を文書化し、AI要約・学習の許可範囲と根拠を明確化
  • 技術的制御の整備:robots.txtやメタタグでのクロール方針を最新化し、将来の用途別ディレクティブ追加に備えて運用フローを設計
  • 出典表示の最適化:構造化データ、著者情報、日付、参照元表記を強化し、AI結果でも誰が言っているかが伝わる設計に
  • 計測の強化:AI Overviews出現クエリの監視、クリックの質・滞在の変化をログ基盤で把握
  • ライセンス・交渉準備:学習利用や要約採用に対する条件・対価の考え方を社内合意

Googleは「AI機能への表示に特別な最適化は不要」としていますが、同時にリンクの探索を助ける設計だと述べています。
出典価値を伝える情報設計と技術基盤の整備は、どのシナリオでも有効です。
参考:Google Search Central

SEOと広告の再設計:クリックの“質”を取りにいく

量から質へ、ファネルの見直し

AI Overviewsの登場で、CTRが平準化する一方、クリックの意図は濃くなるとGoogleは示唆しています。
公式ドキュメントでは、AI付き検索からのクリックは滞在が長い“質の高いクリック”になりがちと表現されています。
これは、上位表示=大量流入の単線モデルが見直されるサインです。

  • 回答の“先”を設計:AI要約で得た知識の次に必要な比較・検証・更新性を提示
  • エビデンスの可視化:一次データ、独自調査、更新履歴の提示でE-E-A-Tを強化
  • 広告の接合点:AI要約に飲み込まれない検討中盤の接点(比較表、計算機、サンプル)を拡充

AIに要約されても、深掘りや意思決定の段階で価値を発揮できる設計へ。
メディアもブランドも、体験の縦軸をつなぎ直すタイミングです。
参考:Google Search Central

ユーザー体験とリスク:正確さ、偏り、そして説明責任

“便利”の裏側を見抜く

AI Overviewsは、複雑な質問の要点を素早く把握するのに有効です。
一方で、要約の誤りや偏り、出典の見えづらさは恒常的な懸念です。
CMAのアプローチは、説明責任と可視性を高め、ユーザーに情報の来歴を返す狙いがあります。

  • 出典リンクの役割:AIの要約は入口、検証は出典で行う設計を明確化
  • モデル学習の線引き:検索体験の改善と、検索外の商用学習を区別
  • 選択画面の実効性:検索・ブラウザ・広告の選択が実質的な選択になっているか検証

規制は万能ではありません。
しかし、透明性の基準が上がれば、ユーザーの自己決定は強くなります。
そのための基盤づくりが、今回の論点です。

まとめ:選択権と発見性の新バランスをつくる

英国CMAの新ルール案は、AI検索の利便性と、出版社の権利保護を両立させる試みです。
オプトアウトと透明性は、対立ではなく設計の問題だと示しています。
検索がAIで加速するほど、出典の価値は逆に重くなるはずです。

最終的な着地点はこれから。
ただ、私たちはすでに動けます。
技術的コントロール、情報設計、計測、交渉準備。
“選べる検索”に備えることが、次のトラフィックの質を決めます。

参考リンク:
Media Innovation
Gadgets360
Google Search Central
Google公式ブログ

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