知が動き出す職場へ
探しても見つからない、知っている人が誰かわからない。そんな“ナレッジの渋滞”を、AIがほどく時代に入りました。
ソニーネットワークコミュニケーションズが発表した『Shpica(シュピカ)』は、情報と人を同時に引き当てる新しいナレッジ基盤です。
チャットで聞けば、答えと「聞くべき人」まで返ってくる。属人化しがちなノウハウを、組織の推進力へ転換するための設計が詰まっています。
提供開始は10月1日、月額10万円からスモールスタートが可能。現場が回り出す起点として注目に値します。
Shpicaとは何者か:人にひも付くナレッジOS
Shpicaは、組織内のナレッジを「どの人に関連する知見か」と結び付けて蓄積し、AIに質問するだけで最適な情報と社内の専門家を見つけられるプラットフォームです。
公式発表では、部門単位の導入から段階的に展開できる柔軟性が強調されています。
発表・詳細は以下をご参照ください。
- PR TIMES:AIナレッジプラットフォーム「Shpica」提供開始
- INTERNET Watch:AIで知識と人をつなぐ新コンセプト
- クラウド Watch:提供開始とPoCの実績
- 製品サイト:Shpica AI Knowledge Collaborator
従来の「文書だけを横断検索する」仕組みとは一線を画し、人と知見のネットワークを可視化・活性化する発想。検索→理解→相談→実行の一連の流れが、ひとつの体験にまとまります。
中核機能の全貌:AIが答えと人を同時に返す
AI Ask Search:聞けば返る、文脈で返す
AI Ask Searchは、社内外のナレッジを横断し、自然言語の質問に要約と出典で応答します。
プロジェクト背景、意思決定の経緯、関連成果物など、単なるFAQを超えた“文脈の回収”が得意です。
- 例:「A製品の価格改定の背景と、影響分析の資料を要約して」
- 例:「過去の大型案件で見落としが起きたチェックポイントを一覧化して」
回答は根拠ドキュメントに紐づき、権限範囲内での参照に限定。
抜け漏れなく短時間でキャッチアップできるため、意思決定の初動が早まります。
Expert Finder:相談すべき人を見つける
Expert Finderは、ナレッジの重心がどの人にあるかを推定し、社内の“頼れる相手”を提示します。
役職や部署だけでは見えないスキルの実像に近づけるのが強みです。
- 例:「Azure OpenAIのRAG構築に強いメンバーと、過去の検証記事は?」
- 例:「顧客B社のアカウント履歴を把握している人と、注意点」
相談の宛先がはっきりすることで、Slack/メールでの“彷徨い”が減少。
チーム横断のコラボレーションが立ち上がりやすくなります。
Knowledge Converter:眠る資産を使える形へ
Knowledge Converterは、バラバラの形式で散らばる知見を要約・変換して、再利用しやすい形に整備します。
議事録→意思決定メモ、提案書→FAQ、長文レポート→1枚サマリーなど、活用フォーマットへ瞬時に変換できます。
- 例:「60分会議の録音から、決定事項・宿題・依存関係の3点を抽出して」
- 例:「RFP回答の素案を、過去ベストプラクティスを踏まえて生成して」
“書き直し負債”が減ることで、現場は本来の創造業務に時間を割けます。
ナレッジの鮮度を保ちながら、アーカイブ価値を最大化します。
現場での使い方:1日の仕事がこう変わる
導入初日からのイメージはシンプルです。
まずは部門で使うドキュメント源(SharePoint、Google Drive、Confluence、社内Wikiなど)を接続し、権限とタグを整備します。
- 朝イチの下調べ:「来週の顧客X向け、過去の同業案件の勝因を3つ」 → 要点と出典が返り、関連する社内エキスパートも表示
- 昼のすり合わせ:「この要件で障害になりやすい点をチェックリスト化」 → 既存ナレッジを再構成して即共有
- 夕方の仕上げ:「今朝の議論を1枚に要約し、Next Actionを3件」 → Converterで配布物まで整う
詰まったらExpert Finderで“次に聞くべき人”を特定。
AIの回答と人の経験がつながることで、意思決定の解像度が上がります。
PoCが示した初期効果:アクティブ率40%超
公開情報では、広告メディア企業の開発部門(約100名)でPoCを実施。
導入3カ月で約500件のナレッジ蓄積、1日アクティブ利用率40%超という数字が示されています。
「Shpicaは、組織内の知見を『誰に関連する知見か』とひも付けて蓄積し、AIに質問するだけで最適な情報と社内の専門家を瞬時に発見できるナレッジマネジメントシステム。」
アクティブ率が高いのは、検索体験と“人への接続”が1ストロークで完結するから。
知の流通が日常の作業に溶け込み、部門横断の連携が加速します。
裏側の設計思想とセキュリティ
Shpicaは、典型的にはRAG(Retrieval-Augmented Generation)の考え方で、ソースドキュメントを根拠に生成応答します。
組織特有の語彙や略語を学習しやすく、誤答の抑制に寄与します。
アクセスは既存の権限体系に準拠し、回答側でも出典と可視化を重視。
監査ログ、データ分離、PIIの扱いなど、エンタープライズ利用に不可欠な前提が押さえられています。
ナレッジは人グラフと結び付いて蓄積され、離職・異動リスクにも強い。
属人ノウハウを“個人の中”から“組織の力学”へ移し替える設計が特徴です。
価格・提供開始とスモールスタート戦略
提供は10月1日から。
月額10万円〜の価格帯で、部署単位の導入から段階的にスケールできるのが現実的です。
まずは高頻度でナレッジが発生・消費されるチーム(営業、CS、開発、企画)を起点に、小さく回して成果を可視化。
ROIが見えた段階で、対象範囲とデータソースを広げるのが定石です。
最新の提供条件は公式発表をご確認ください。
競合との違い:人起点のナレッジ循環
Microsoft CopilotやNotion Q&A、SlackのAI検索など、業務AIは群雄割拠です。
Shpicaのユニークさは、「人と知見を同時に返す」体験と、コンバータによる再利用の自動化にあります。
- 縦の深さ:案件履歴や意思決定の文脈まで拾い、議論の再現性を高める
- 横の広がり:Expert Finderで部門横断の連携を促し、コラボを早期立ち上げ
- 運用の軽さ:Converterで「使える形」の量産を自動化し、鮮度を維持
検索・要約の一点突破ではなく、探索→協働→成果物化までを通しで設計。
“知が循環するほど強くなる組織”づくりに向いた一手です。
導入チェックリスト:はじめる前に整えること
- ソースの棚卸し:どの保管先(SharePoint/Drive/Confluence等)を接続するか、優先度を決める
- 権限ポリシー:最小権限・閲覧範囲・機微情報の扱いの原則を言語化
- タグ設計:プロジェクト/顧客/技術領域など、検索性を上げるメタデータを定義
- PoC対象:3カ月で成果が見える“困りごと”を明確化(例:新人のキャッチアップ、提案品質の平準化)
- 評価指標:回答までの時間短縮、二次利用率、部門横断の相談件数などをKPI化
準備の精度が、そのまま初期の体験と成果に直結します。
“まずは小さく速く”で、勝ち筋を早期に掴みましょう。
まとめ:知の高速道路を、組織の標準装備に
Shpicaは、AI Ask Search、Expert Finder、Knowledge Converterで、情報と人の距離を一気に縮めます。
10月1日の提供開始、月額10万円〜のプライシングは、現場ドリブンのDXにちょうど良いサイズ感です。
まずは身近なチームから。
ナレッジが流れ始めた瞬間、意思決定の速さと解像度は、確かに上がります。
次の一手は、あなたの組織の番です。
参考リンク:
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