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三井不動産が全社ChatGPT Enterprise導入へ: カスタムGPTと社長AIエージェントで業務削減10%超を狙う

目次

経営と現場をつなぐAIの号砲

PoC止まりの取り組みが多い中、三井不動産が一気に踏み込んだ。

ChatGPT Enterpriseの全社展開と、現場主導のカスタムGPT、そして経営の思考を“共有知”に変える社長AIエージェント
この三位一体で、業務削減10%超を現実の目標に据えた。

単なる道具の配布ではない。
推進体制、内製基盤、成果指標までセットで設計し、「使える状態」へ落とし込んでいるのが肝だ。
本稿では、この全社展開の“型”をケーススタディとして読み解く。

数字で読む発表の全体像

まずは全体像を数値で掴みたい。

  • 対象: 全社員約2,000人
  • 推進体制: 85部門からAI推進リーダー150名
  • 内製成果: 導入から約3カ月でカスタムGPT約500件が運用
  • 目標: 全社で業務削減時間10%以上
  • 開始: 2025年10月1日、ChatGPT Enterpriseを全社員導入

「2025年10月1日より…ChatGPT Enterpriseの全社員への導入を開始…85部門・150名のAI推進リーダー…約3か月で500件のカスタムGPTが運用…今後全社で業務削減時間10%以上を目指します」
出典: 三井不動産 ニュースリリース

外部報道も同趣旨で並ぶ。
社内特化のプロダクトとして「社長AIエージェント」「DX本部長AIエージェント」「資料自動生成AI」の運用が公表された。

現場主導を支える推進体制—85部門・150名の“ハブ”

この取り組みの背骨はAI推進リーダーだ。
各部門の実務に通じた人材がハブとなり、ユースケース発掘から効果測定まで担う。

研修と横展開の仕組みも早期に立ち上げた。
社内研修には延べ1,300人が参加し、Microsoft Teamsで情報共有を継続する。

「AI推進リーダーは…Microsoft Teamsでの情報発信や有志による共有会等を通じ、現場のノウハウやアイデアを全社へ迅速に共有」
出典: PR TIMES

“現場起点”が機能する理由は明快だ。
部門ごとにルールやナレッジが違う以上、作る人=使う人に近い体制が最短距離になる。

両輪の内製基盤—カスタムGPT × Azure上の開発環境

三井不動産は「カスタムGPT」内製AI開発環境を両輪で回す。
前者はノーコードで部門専用アシスタントを素早く作るため、後者は複数モデルを組み合わせた高度な業務プロダクトを継続開発するためだ。

カスタムGPTの具体例は実務直結だ。
物件情報の参照・要約経理処理アシスタントプレスリリースの下書き支援など、どれも時間の重たい“定番”に刺さる。

「導入開始から約3カ月で約500件運用。物件情報の参照・要約、経理処理アシスタント、プレスリリース下書き支援などで活用」
出典: ITmedia

内製環境はMicrosoft Azure上で構築され、複数の生成AIモデルを複合利用。
社内データや文化に合わせて継続的に改善する“地力”を育てている。

社長AIエージェントの意味—意思決定のスタイルを共有知に

象徴的なのが社長AIエージェントだ。
トップの視点や判断基準を擬似的に再現し、社員の問いに答える。

さらにDX本部長AIエージェントは資料レビューを標準化。
DX本部内では資料作成・修正時間を平均約30%削減と報じられている。

「DX本部長AIエージェント…事前レビューのルール化で、資料作成や修正時間を平均約30%削減」
出典: ITmedia

社長・本部長レベルの“思考様式”をAI化する狙いは、単なる効率化ではない。
意思決定の質の均てん化と、説明コストの削減だ。
合意形成の初速が上がり、手戻りが減るほど10%超の削減が積み上がる。

はじめての使い方ガイド—現場で効くプロンプトと設計

小さく始めて、深く刺す

  • 対象業務を絞る: 定型で量が多く、手戻りが多い作業(要約、初稿作成、テンプレ回答)。
  • 文脈を埋める: 部門マニュアル、品質基準、用語集をカスタムGPTの指示に組み込み、曖昧さを潰す。
  • プロンプト設計: 入力→思考ステップ→出力形式を固定し、評価観点を明示する。
  • ファクト連携: 必要に応じてRAGやデータビューを設定し、最新版情報に寄せる。
  • 効果測定: “削減時間/件 × 件数”を週次で集計。主観満足度ではなく実測時間で。
  • 共有: 成功プロンプトはテンプレ化し、Teamsで横展開。

ガバナンスとセキュリティ

  • アクセス設計: 部門・機密レベルでGPT共有設定を分離。公開範囲は最小権限。
  • 出力の二次利用規定: 出典記載、事実確認の責任分界を明文化。
  • 評価ループ: 誤り事例の収集→ルール化→テンプレ更新を毎週回す。

道具は同じでも、設計と運用で成果は大きく変わる。
「プロンプトも資産」として扱い、ナレッジ化に投資したチームが勝つ。

90日で型を作る—ケーススタディとしてのロードマップ

0–30日: 着火

  • 役割確定: 各部門の推進リーダー任命、KPIは「時間削減」「一次品質」「展開性」。
  • 基本テンプレ: 要約、下書き、レビューの3型をカスタムGPT化。
  • 計測準備: 作業時間のベースラインを実測で取得。

31–60日: 深掘り

  • ドメイン注入: マニュアル、チェックリスト、用語集を統合し、誤りパターンを削減。
  • レビューフロー: AI→人の二段レビューをワークフローに固定。
  • 可視化: 部門ダッシュボードで時間削減の積み上げを見える化。

61–90日: 固着

  • 横展開: 3つの成功事例をテンプレ化し、他部門に移植。
  • 自動化の萌芽: カレンダー、ストレージ、Docs連携で半自動の運用を試す。
  • レビュー頻度最適化: リスク低の出力は承認省略へ。

このサイクルで、三井不動産が示した「3カ月・500件」に接続する再現性が生まれる。

リスクと限界—過信せずに積み上げる10%超

注意したいのは過信だ。
社長AIの人格化は強力だが、最新の経営判断や機微なニュアンスを常に反映できるとは限らない。

また、ハルシネーションや出典不明瞭な要約は、レビュー工数を逆に増やす。
RAGやデータ連携でファクトに寄せる仕組みを前提にするべきだ。

最後に、効果測定。
削減時間の二重計上や、基準業務の変更で効果がぶれる。
ベースラインの更新と、分母に当たる案件量の変動管理を忘れない。

「ChatGPT Enterpriseは要約・翻訳・資料作成・コード生成・データ整理などを支援。カスタムGPTと内製開発の両輪で全社10%以上の業務削減を目指す」
出典: ZDNET Japan

まとめ—全社展開の“型”を自社に写す

三井不動産は、推進体制(150名のリーダー)内製基盤(Azure×複数モデル)成果指標(時間10%超)を一体で回し、3カ月で500件のカスタムGPTを立ち上げた。

重要なのは魔法のレシピではない。
現場の文脈をAIに埋め込む運用と、効果を可視化して改善を回す型だ。

同じ型は他社でも再現できる。
まずは“3型テンプレ”から始め、90日で自社版の「使えるAI」を定着させよう。


参考リンク:
三井不動産 公式リリース /
PR TIMES /
ITmedia /
EnterpriseZine /
ZDNET Japan

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