スクロールの先はすべてAI。Meta「Vibes」が連れていく新しい動画体験
MetaがAI生成ショート動画の新フィード「Vibes」を公開しました。
場所はMeta AIアプリとmeta.ai(Web)。ユーザーはAIで作られた無数の短尺クリップをスクロールし、気に入った動画をそのままリミックスして投稿できます。
さらに作品はInstagram ReelsやFacebook Storiesへクロスポストが可能です。
「撮らずに作る」動画体験は、スマホ時代のショートフォームをもう一段先へ押し出します。
フィードは視聴に応じてパーソナライズされ、好みに合うAI動画が流れるように最適化。
公開範囲は段階的に拡大中で、国やアカウントによって利用可否や機能差がある点は留意したいところです。
Vibesのコア機能と体験デザイン
探索と発見
Vibesのタイムラインは、最初から最後までAI生成動画のみで構成されます。
視聴・タップ・滞在などの行動で嗜好が学習され、フィードは徐々にあなた向けに変化します。
「撮影の有無」ではなく「アイデアの強度」や「編集の妙」が主役になります。
生成とリミックス
- プロンプト生成:テキストや手持ち素材から新規動画を作成
- ワンタップ・リミックス:フィード上の動画を自分の解釈で変形
- スタイル調整:質感、色味、動き、音楽レイヤーのコントロール
共有と連携
- VibesフィードやDMへの投稿
- Instagram Reels / Facebook Storiesへクロスポスト
- Webのmeta.aiからの閲覧にも対応
Metaは、既存SNSをAI生成物で溢れさせるより、まずは専用の創作レーンを設ける設計思想を採っているように見えます。
その上で、既存の視聴面(Reels/Stories)へ橋を架ける構図です。
最初の1本を作る:かんたん実践ガイド
まずMeta AIアプリを開き、Vibesのフィードを覗きます。
気になる動画を見つけたらRemixで変形するか、下部の生成ボタンからプロンプトで新規作成に進みます。
素材があれば画像や短い動画を取り込み、スタイルや音楽を重ねて仕上げます。
- プロンプトのコツ:主語・構図・時間帯・質感・カメラワーク・ムードを短文で要約
- 反復:1発で完成を狙わず、小さく出して微調整を重ねる
- ラベル:AI生成である旨の明示は信頼を損なわない。むしろブランドセーフティの一部
- 公開:Vibes→反応計測→Reels/Storiesへ展開の順で最適化
Vibesは「完成度」より「スピード」と「リミックス適性」を評価しやすい環境です。
まずは1テーマを連作して、フィードの学習を促しながら自分の“vibe”を確立しましょう。
クリエイター視点:リミックス文化と“撮らない制作”の作法
Vibesの本質はリミックス可能性にあります。
他者の作品を起点に、スタイルや物語を重ねることで「作る⇄消費する」の境界が薄くなります。
これは従来の撮影主導のワークフローから、編集・指揮・演出主導の創作へと軸足を移す動きです。
- プロンプト公開の設計:一部を共有してコラボ誘発、全部は公開せず差別化も担保
- プロヴァナンス:出所情報や改変履歴の明示で信用を担保
- 水印・開示:AI生成である表示やウォーターマーク活用で誤認を回避
- コミュニティ:派生作品に寛容な方針は、長期的に“作られ続けるIP”を育てる
「撮らない」ことは創作を薄めるのではなく、編集・指示・審美眼の比重を高めます。
著作権や肖像、商標は引き続き重要。二次利用のポリシーを明文化しておくと安心です。
技術の現在地:モデル、パートナー、画質
初期のVibesは、MidjourneyやBlack Forest Labsなど外部モデルと連携しつつ、Meta自身も動画生成系の内製を進めています。
精度やスタイルの幅は着実に拡張しており、短尺での高密度な“見せ場”作りに向いています。
- モデル進化:Metaは動画生成研究を継続し、編集・合成・質感制御の粒度が上がる見込み
- 長さと音:短尺中心。音楽やSEレイヤーの組み合わせで体験をブースト
- 個人化:視聴行動で好みを学習し、フィードは個々に最適化
制作面では、テキスト→絵コンテ→試写→微調整という反復を素早く回せます。
一方で長尺の物語性や複雑なカメラブロッキングは、まだ工夫が必要です。
賛否と論争:AIスロップか、新しい創作の場か
Vibesは華やかな一方、批判も集めています。
品質や意味の薄い生成物が大量に流入するのでは、という懸念です。
議論を促した見出しのひとつが、TechCrunchのこちら。
Meta launches ‘Vibes,’ a short-form video feed of AI slop.
出典: TechCrunch
他方、事実ベースではMeta AIアプリとmeta.aiでの提供開始、クロスポスト対応が報じられています。
Meta … launched a new feed of AI videos, called Vibes … rolled out to the Meta AI app and on the meta.ai website.
出典: Reuters
筆者の見立てでは、鍵は発見性の設計と品質の選別です。
フィードが単なる生成物の垂れ流しではなく、解釈・編集・協働の価値を評価できるなら、Vibesは創作のための“場所”になり得ます。
マーケター/ブランド活用のヒント
- シリーズ化:3〜5本の短期シリーズで“vibe”を定義し、Vibes→Reels/Storiesに横展開
- リミックス設計:プロンプトや素材の一部をあえて公開し、二次創作を促す
- 透明性:AI生成の明示、権利処理、モデル由来のバイアス確認をルール化
- 計測:Vibes内の反応速度とIG/FBでの滞在/再生完了を二段で最適化
- ブランドセーフティ:NGモチーフ、似姿、商標の取り扱いをチームで事前合意
Vibesは実験の母艦として優秀です。
短い学習サイクルでクリエイティブを磨き、既存チャネルへ広げる運用が現実的です。
よくある疑問(FAQ)
Q. どこで使える?
現時点ではMeta AIアプリとmeta.ai(Web)から利用可能です。
提供地域は段階的に拡大中で、国やアカウントで機能差が出る場合があります。
Q. 動画の尺は?
ショートフォーム前提で、短尺に最適化されています。
長尺物語の制作は、分割連作や外部編集との併用が現実的です。
Q. 著作権や肖像は?
AIだから免責にはなりません。素材や似姿の扱い、商標の露出には注意。
開示表示・水印・出所管理を運用に組み込みましょう。
Q. InstagramやFacebookとの関係は?
Vibesで作った動画はReels/Storiesへクロスポストできます。
Vibesは創作と発見のハブ、既存SNSは配信面という棲み分けです。
まとめ:撮らない動画時代の入口としてのVibes
Vibesは、「撮る技術」を前提にしないショート動画の新標準を提示しました。
プロンプトと編集、そしてリミックスが主役になる世界です。
創作の敷居が下がる一方で、選別と透明性がこれまで以上に重要になります。
まずは小さく試し、学習サイクルを回すこと。
Vibesを実験の母艦として活用し、良い手応えを既存の配信面へ広げれば、AI時代のコンテンツ運用は一段上の解像度に到達します。
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