仕事が自律する日のはじまり
企業の「検索ツール」だったGleanが、ついに仕事を動かす「自律エージェント」へと舵を切りました。
社内ナレッジと業務アプリをまとめて理解し、手順を計画して実行まで持っていく。そんなWork AI時代の土台が整いつつあります。
さらに同時発表の「Work AI Institute」。
AIが働き方に何をもたらすのかを学術的に検証し、長期のベストプラクティスを社会に還流させる構想です。
Fresh off doubling ARR to $200M in nine months, Glean unveils autonomous AI agents and Work AI Institute with Stanford and Harvard researchers.
出典: Reworked
「社内検索SaaS」から「ワークAIプラットフォーム」へ。
その転換点を、実装と研究の両輪で押し出す発表です。
発表の要点と背景
Gleanは「Work AI Institute」を立ち上げ、同時にエンタープライズ向けの自律エージェントを公開しました。
Instituteにはスタンフォードやハーバードの研究者が参加し、AIの現場効果を体系化していきます。
プロダクト面では、社内SaaS・権限・ドキュメント・人やプロセスの関係性までを束ねる「Enterprise Context」を中核に据えました。
検索とアシスタントに加え、エージェントが実務のアクションを自律的に呼び出す設計です。
Work AI leader Glean today announced the launch of the Work AI Institute, a first-of-its-kind research initiative dedicated to decoding what actually drives results at work… and unveiled autonomous agents built on Glean Enterprise Context.
出典: Business Wire
ARRは9ヶ月で2倍の2億ドルへ。
可視性と実装力を兼ね備えたステージに入ったことを、市場も支持しています。
Enterprise Contextの中身──社内グラフ×個人グラフ
Gleanの強みは「文脈の深さ」です。
社内の人・文書・会話・チケット・顧客・権限といったエンティティを「Enterprise Graph」で結び、個人の役割・履歴・関係性を「Personal Graph」で補完する。両者を統合したEnterprise Contextが、検索だけでなく手続きの実行精度を底上げします。
この文脈理解を背景に、エージェントは85以上のアクションを呼び出しながら、業務を組み立てます。
単発の呼び出しではなく、参照先の根拠・権限・依存関係まで踏まえて段取りを切るのがポイントです。
- 横断接続: 100以上のネイティブコネクタでメール/チャット/ドキュメント/CRM/課題管理などを統合
- 権限継承: 元システムのACLを厳密継承し、見えるべき情報だけを見る
- 証拠性: 参照ソースを常時トレースし、回答やアクションに出典を付与
検索、会話、実行が一体化することで、知識の再利用から意思決定、オペレーションまでが滑らかにつながります。
Glean: Product overview
自律エージェントの使い方──現場での動かし方
Gleanのエージェントは、自然言語の指示から「判定→計画→実行」を自動で編成します。
開始はシンプル、拡張は強力。ノーコードからフルコードまで段階的に設計できます。
よくあるシナリオ
- セールス運用: 過去案件の勝ち筋を要約し、Salesforceを更新。ミーティングを自動調整
- ITヘルプデスク: ナレッジを参照し、Jira/ServiceNowにチケット化。進捗をSlackへ通知
- 人事オンボーディング: チーム別ガイドを生成し、入社手続きや権限申請を一括実行
- 財務オペレーション: 稟議の要点を抽出し、関連ドキュメントと承認フローを自動紐づけ
導入の実務ポイント
- 先にコンテキスト: 接続と権限継承を整え、ナレッジの粒度と鮮度を確保
- ユースケース選定: 「反復×証跡が要る×多アプリ跨ぎ」の領域から着手
- 運用ガードレール: 実行前の承認、操作ログ、ロールバック手順を標準化
「検索→回答→実行」の一連が1つの画面で閉じるため、人的ハンドオフが激減。
誤操作の余地も設計で抑え込めます。
セキュリティと権限──“見えるべきものだけ見る”を貫く
エンタープライズで鍵となるのは、正確さとセキュリティです。
Gleanはソースシステムの権限を厳格に継承し、ユーザーが許可された情報だけを扱います。監査やコンプライアンス対応も前提設計です。
“Glean’s governance engine ensures users can only access information they’re permitted to see, enforcing real-time enterprise permissions and governance rules.”
出典: BRIDGE
アクセス継承、暗号化、監査証跡、SOC2 Type2などの企業要件にも対応。
「まず安全、その上で速い」を体現しています。
Work AI Instituteの意味──現場知と学術知の往復運動
Work AI Instituteは、AIが現場にもたらす成果の因果を解き明かす試みです。
ツール機能の話を越え、組織設計・プロセス設計・意思決定のリズムまでを研究対象に含めます。
スタンフォード/ハーバードの研究者も参画し、長期的なエビデンスを社会へ還元。
Gleanは実装から得た知見を提供し、研究成果はプロダクトへ戻る。実務と学術のループが強みです。
“A first-of-its-kind research initiative dedicated to decoding what actually drives results at work.”
出典: Business Wire
「AIの実験」から「実装の科学」へ。
ベストプラクティスを半歩ずつ確実に積み上げる土台になります。
Gleanの転身と位置づけ──検索SaaSからWork AIプラットフォームへ
Gleanはもともと“社内のGoogle”として評価されてきました。
その検索とナレッジグラフを核に、アシスタント、そしてエージェントへ。段階的な拡張で「探す・わかる・動く」を一体化しました。
注目は、Microsoft 365やSlack、Salesforceなどへの深い統合です。
既存の働く場所にAIをレイヤーとして重ね、日常の流れを崩さず進化させます。
国内でも導入・販売パートナーが広がり、ナレッジの分断と権限管理の両立を現実解で進めています。
Glean 公式 / atpartners: Microsoft連携
導入ロードマップ──小さく始めて、深く賢く
ステップ1: コンテキストの仕込み
- 主要SaaSを接続し、権限継承と監査ログを確認
- ナレッジの鮮度管理(所有者/更新フロー)を定義
ステップ2: 価値検証のショーケース
- 「反復×証跡×多アプリ」のユースケースを1~2件選定
- 回答の根拠提示と承認フローを必須化
ステップ3: エージェントの段階拡張
- 85+アクションの中から頻出手順をテンプレート化
- ノーコード→軽コード→フルコードの順に高度化
ステップ4: 組織設計とポリシー
- 役割ごとの操作権限、ロールバック、モデル更新方針を整備
- Instituteの知見を反映し、組織の意思決定と協業の型を更新
「まず速く、つぎに広く」。
AIへの期待値を、確度の高い小さな成功体験で積み上げるのが近道です。
まとめ──“文脈×実行”がワークAIの決定打
Gleanは、Enterprise Contextを核に検索・会話・実行をつなげました。
ARR 2億ドルへの成長は、その実効性への投票でもあります。
Work AI Instituteは、現場の勝ち筋を学術的に検証し続ける仕組みです。
「AIを使う」から「AIで動く」へ。自律エージェントの時代は、もう業務のすぐ隣まで来ています。
参考リンク:
Reworked: 発表概要とARR / Business Wire: 公式リリース / Glean: プロダクト概要 / BRIDGE: ガバナンス

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