LLMに“流れ込む瞬間”を止める発想
生成AIの便利さは、そのまま情報流出のしやすさです。テキストの貼り付け、ファイルのアップロード、URL指定の参照。どれも手元のデータがLLMに渡る入口になります。
FasooのAI-R DLPは、この“流れ込む瞬間”を前提に設計を厚くします。入力を賢く検知し、適用ポリシーを即時に判断し、操作と証跡を残す。ブロックだけでなく、警告や申請付き許可など、現場が回るガードレールを備えます。
本稿では、最新情報を踏まえつつ、DLP×生成AIを入力・出力・ログの3点で分解。さらに誤検知、例外運用、シャドーAI対策という現場課題に効く実装勘所を整理します。
Fasoo AI-R DLP強化の背景と要点
Fasooは、生成AI活用の安全性を高めるためAI-R DLPを拡張しました。最新リリースでは、テキストプロンプトとファイルアップロードの双方に対して、コンテキストを加味した検知を適用。自然言語とLLMベースの分析で機微情報を高精度に同定し、組織のAIポリシーを一貫して実施します。
「With the latest update, AI-R DLP applies context-aware detection on data interactions with generative AI, including both text prompts and file uploads.」
AiThority
公式製品情報でも、生成AI利用時の情報漏えい予防を主眼に、パターンマッチングとAI技術の融合をうたっています。実務に落とすと、検知(データ認識)・制御(許可/警告/遮断)・監査(証跡/可監査性)の三位一体運用が肝になります。
AI時代のDLPを3要素で分解:入力・出力・ログ
入力(Prompt/Upload)
最重要は入力の直前検知です。クリップボード貼り付け、ブラウザフォーム、ドラッグ&ドロップのアップロードをフックし、個人情報、IP(設計図・ソースコード)、認証情報、顧客データを即座にスキャンします。
- 検知手法の組み合わせ:正規表現/辞書、フィンガープリント、ML分類、LLM補助
- 応答:遮断、要申請の一時許可、マスキングして許可、教育ポップアップ
- スコープ:ChatGPT/GeminiなどのSaaS、社内LLM、RAG経由のベクタ検索
出力(Response)
出力側は機微データの再流出を防ぐ設計です。AI応答中の要配慮個人情報や社外秘の混入を検知し、マスキングまたは提示前ブロックで保護します。プロンプトインジェクション由来の漏えい誘導にも、ポリシー優先のガードレールを適用します。
ログ(Evidence)
すべては監査可能性で締まります。誰が・いつ・どの端末から・何をLLMに送ったか。判定根拠、ユーザーの選択、管理者の承認履歴まで一貫記録。SIEM連携で脅威ハンティングと継続改善に接続します。
現場導入の勘所:誤検知・例外運用・シャドーAI
誤検知を抑える
- 段階導入:観測→警告→ソフトブロック→ハードブロックの順で切り替え
- 指紋照合:重要文書のフィンガープリントで類似断片も捕捉し、雑ノイズを削減
- LLM補助:文脈評価で“それっぽい数値”と真の機密を判別
例外運用を磨く
- JIT例外:用途申告と自動失効を組み合わせ、恒久例外を作らない
- リスク連動:ユーザー/端末/データ感度で許容度を動的調整
- スチュワード承認:データオーナーのワークフロー承認を必須化
シャドーAIを抑える
- 可視化:CASB/プロキシ/DNSでAIサイト利用を棚卸し
- 分離:許可AIはSSE経由で強制ルーティング、未承認AIは既定ブロック
- 啓発:ポップアップでリスク説明と代替手段を提示
アーキテクチャ設計:ポリシーから実装まで
実装は多層が原則です。エンドポイント、ブラウザ、ネットワーク、クラウドの各層で補完し合います。
- エンドポイントDLP:クリップボード/ファイルIOの直前検知と遮断。オフラインでも有効
- ブラウザ拡張/Isolation:生成AIドメインでの入力捕捉、DOMレベルのマスキング
- CASB/SSE:未承認AI検知、許可AIのポリシー強制、転送前のサニタイズ
- データ基盤:自動分類、機密ラベル、鍵管理。RAGに供出する索引もラベル継承
ポリシーはデータ起点で定義します。個人情報、財務、設計、ソースコード、法規制データのセットを作り、チャネル横断で同一の判定・制御を適用。ログは一元で相関させ、改善ループに回します。
使い方と初期セットアップ:90日プラン
- 0–30日:可視化フェーズ。観測モードでAIサイト向けトラフィックと貼り付け/アップロード実態を収集。トップ10ユースケースと誤検知源を特定
- 31–60日:パイロット。高リスクユースケースに警告→ソフトブロックを適用。JIT例外と承認フローを実戦投入
- 61–90日:全社展開。許可AIの強制経路化、未承認AIの既定拒否。KPIをダッシュボード化
現場向けには、許可例と禁止例をテンプレで配布。プロンプトの書き換え例(マスキング表現)も用意し、ユーザー体験を損なわない導入を目指します。
比較視点:他社動向とFasooの位置づけ
Proofpointは生成AI向けに行動+コンテンツで許可/不許可を判断するDLP Transformを展開。チャネル横断のクラウドネイティブ実装を強調しています。
「従来のDLP…とは異なり、プルーフポイントは従業員の振る舞いや入力されるコンテンツに基づいて、操作の許可または禁止を判断」
PR TIMES
また、CloudflareはAIツールへのアップロードが典型的流出経路である点を整理し、ネットワーク/端末/保管の全域でのDLP統制を推奨します。
“An employee can upload sensitive data into an AI tool, such as a large language model (LLM) … DLP … can then send an alert … or block the data.”
Cloudflare
Fasoo AI-R DLPの強みは、生成AIの入出力コンテキストに寄せた検知と、監査可能性まで含む統合運用です。エンドポイント~クラウドの合わせ技で、現場の“入力直前”に効きます。
ユースケースで理解するAI-R DLP
- 営業が提案書をChatGPTに要約依頼:社外秘ラベルと一致。要申請フローを提示し、承認時のみ自動マスキングで許可
- 開発がコード断片をAIに貼付:OSS由来は許可、社内IPは遮断。類似指紋で断片化持ち出しも検出
- RAGでFAQ更新:索引の機密ラベル継承で、応答前にマスキング/拒否を分岐
- ファイルアップロード添削:Pマーク/法令テンプレに該当で自動ブロック。代替として社内LLMのルートを案内
運用メトリクス:回し続けるための指標
- 検知精度:Precision/Recall、誤検知率。ポリシー粒度のチューニングに直結
- 例外健全性:JIT例外の件数・失効率・再発率。恒久例外の撲滅を監視
- シャドーAI縮減:未承認AIへのリクエスト数推移、許可AIへの誘導率
- ユーザー体験:警告→学習→遵守の遷移時間、業務阻害インシデント
これらを月次レビューし、辞書/指紋の更新、テンプレ改善、許可AIの拡充につなげます。セキュリティは“導入して終わり”ではありません。
まとめ:入力・出力・ログの三位一体で“安全に使う”を標準化
生成AIは止めるものではなく、安全に使うものです。AI-R DLPの狙いは、入力・出力・ログの三位一体で、現場のスピードを落とさずにガバナンスを通すこと。誤検知、例外、シャドーAIといった実務の“沼”に、技術×運用の両輪で踏み込みます。
次の一手は、観測モードでの実態把握とトップユースケースからの段階導入。許可AIの強化とJIT例外の文化を根付かせ、持続可能なAI活用を標準化していきましょう。

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