現場が動く瞬間:AI文書がそのまま起票になる
EQUESが製薬QAの実務に寄せた一手を打ちました。
生成AIで作った文書が、もう手入力やコピペを待ちません。
品質管理システムに自動で取り込まれ、そのまま起票まで進みます。
ユニオンシンクの「品質デザイナー for GxP」と「QAI Generator」が連携。
GxP準拠の厳格な運用に、AIとQMSの直結が加わりました。
転記工数の削減だけでなく、監査性とトレーサビリティも底上げします。
公式発表は以下のとおりです。
「QAI Generator」がユニオンシンク「品質デザイナー for GxP」との自動連携を開始
なにが起きたか:QAI Generator × 品質デザイナー for GxP
EQUESは、東大松尾研発のAIスタートアップ。
同社の製薬向けAI SaaS「QAI Generator」は、変更申請書や逸脱報告書など、QA文書の草案生成を得意とします。
2025年2月のリリース以降、現場での利用が拡がってきました。
今回、ユニオンシンクの「品質デザイナー for GxP」へ自動で取り込み・起票できる連携を開始。
生成物をQMSに継ぎ目なく流し込み、メタデータも保持します。
起票からレビュー、承認フローまでの立ち上がりが速くなります。
背景には、製薬・医療機器のQAにおけるALCOA+準拠や監査対応の高度化があります。
AIで書く、その後の記録・統制まで一気通貫。
「書ける」から「回せる」へ、価値の重心が移りました。
EQUES公式|PR TIMES(QAI-Generator リリース)|ASCII.jp(紹介記事)
QAI Generatorの中身:製薬QAに寄せた生成AI
対象文書とテンプレート
QAI Generatorは、変更管理、逸脱、CAPA、SOP改訂のようなGMP/GQP領域の定型文書に強みを持ちます。
各社の様式や語彙、用語統一に沿うテンプレートを柔軟にカスタマイズ。
用語の統制と差分説明など、監査で問われやすい箇所を外しません。
レビュー性と根拠提示
生成内容は根拠情報と紐づけ表示が可能。
レビューアは指摘を入れるだけで再生成ループに反映されます。
版管理や追跡に関するメタデータ付与も前提化されています。
セキュリティと運用選択肢
医療・製薬向けの権限管理・ログ監査を備え、社内運用や閉域環境にも配慮。
軽量LLMの活用やファインチューニングの柔軟性があり、現場適合が速いのが特徴です。
参考:EQUES ニュース(QAI-Generator)
どう繋がるか:データフローとガバナンス
データの通り道
生成されたドラフトは、必要なメタデータを保持したまま「品質デザイナー for GxP」へ。
文書種別、関連設備・ロット、根拠リンク、関連CAPA/変更番号などを付与します。
QMS側での起票→回付→承認→保管をそのまま踏襲します。
監査性の確保
改ざん防止、完全性、可読性、同時性など、ALCOA+の観点を運用上で担保。
生成・修正・承認の各イベントが監査証跡につながります。
レビューコメントも履歴化され、査察での説明性が向上します。
統合アーキテクチャ
- 接続方式:APIベースの連携で双方向更新に対応可
- 識別子:ユニークIDで原稿とQMSレコードを相互参照
- 権限制御:QMS側ロールと連動し誤起票を抑止
使い方ガイド:現場導入のステップ
スモールスタートの勘所
- 1. 対象文書の選定:変更申請や逸脱など、定型度が高く件数が多い領域から
- 2. テンプレ改修:社内様式、用語、判断基準をテンプレに反映
- 3. レビュー基準の明文化:AI生成の可否ライン、差戻し理由の型を決める
- 4. QMS連携テスト:メタデータの欠落・重複・型違いを棚卸し
- 5. 教育と権限:起票・レビュー・承認のロール教育をジョブエイド化
日常運用の流れ
- 担当者がQAI Generatorでドラフト生成
- レビュー指摘を反映し再生成
- 承認レベルに到達したら、QMSに自動取り込み・起票
- 回付・是正・承認・保管までQMS側で一元管理
この一連を繰り返し、リワーク率やリードタイムをKPIで可視化。
週次/隔週でテンプレの改善サイクルを回すと定着が早まります。
期待できる効果:工数・品質・トレーサビリティ
転記ゼロで人為ミスが減り、初回提出の品質が安定します。
レビューと再生成をショートサイクル化でき、起票までの時間が短縮。
監査時の根拠提示や差分説明が簡単になり、ストレスが減ります。
- 工数削減:ドラフト作成〜起票までの時間を大幅短縮
- コンプライアンス:ALCOA+準拠の証跡が自然に残る
- ナレッジ継承:良い文章例がテンプレに集約され組織知に
- 一貫性:表現ゆれ、根拠欠落、必須項目漏れを抑止
特に、複数拠点・多品種を抱える企業では、表現・様式の統一が効きます。
査察前の緊急是正対応も、連携により立ち上がりが早くなります。
リスクと留意点:AI文書の妥当性と監査対応
AIは補助であり、最終責任は人。
レビューの「チェック観点」を標準化し、許容されない生成の例を教育に織り込みます。
過大な自動化は権限逸脱や誤起票のリスクを高めます。
- 妥当性確認:クリティカル判断は人による最終レビューを必須化
- データ完全性:生成・修正・承認の全ログを監査証跡へ
- 用語統制:マスター辞書をQAI側テンプレとQMSで同期
- 継続改善:差戻し理由の分析でテンプレをチューニング
査察時の説明のために、生成根拠と版管理を示せる運用ドキュメントを整備。
ベンダーの変更管理方針とSLAも併せて確認しておくと安心です。
周辺動向と文脈:なぜ今つながるのか
QAI-Generatorは2025年2月に公開され、変更申請の自動生成などで話題に。
その後のQMS連携は、現場運用に直結する「最後の一マイル」を埋める動きです。
PR TIMES(リリース)/ASCII.jp(解説)
生成AIは単独では価値が限定的。
業務システムと接続されて初めて、責任あるプロセスに乗ります。
GxPの世界で受け入れられる条件を、今回の連携は満たしています。
まとめ:GxP時代の生成AIは「現場接続」で真価を出す
EQUESの自動連携は、文書生成と品質管理を一本の線で結びました。
手作業の転記を無くし、証跡を自動で刻み、現場の負荷を軽くする。
AIの価値は、現場のQMSに接続された瞬間に最大化します。
次の一歩は、小さく始めて速く回すこと。
対象文書を絞り、テンプレを磨き、レビュー基準を固める。
そのサイクルが、監査に強いデジタルQAの基盤を作ります。

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