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Dialpad、会話AI業務自動化の『Agentic AI Platform』を発表

目次

“答える”から“動く”へ。顧客接点を作り替えるエージェント

チャットボットがFAQをなぞる時代は終わりつつあります。DialpadのAgentic AI Platformは、音声とテキストの両チャネルで会話しながら、実際の業務フローを自律的に実行するための基盤です。

顧客が返品を依頼すれば、ポリシーを判断し、在庫や決済を確認し、返金や集荷まで通しで手配します。必要に応じて人へ滑らかにエスカレーションし、会話の文脈を失いません。

情報検索の支援ではなく結果の達成に焦点が移りました。現場で「手が動くAI」をどう実装するか。ここが競争力の差になります。

発表の中身:世代交代を告げる“Agentic”の正体

Dialpadは2025年10月、Agentic AI Platformを正式発表しました。音声・テキストの自律エージェントが、複数ステップのタスクを推論し、既存システムへ安全なコネクタで接続してエンドツーエンドに実行します。

“enabling businesses to build autonomous voice- and text-based AI agents that understand complex requests, reason through multi-step tasks, and execute them end-to-end across existing systems via secure connectors.”
Business Wire: Dialpad Launches Its Agentic AI Platform

Dialpadは“チャットボット時代の終焉”を掲げ、受け答えから自律的な行動への転換を強調。初日から最大70%のリクエスト解決という攻めた目標も示されています。

“replaces passive retrieval with autonomous action – resolving up to 70% of customer requests on day one.”
Dialpad プレスリリース

プラットフォームの中核:設計思想と主要機能

Agentic AI Platformは、会話理解・推論・実行・監視を一体化。既存のUC/CC基盤にネイティブ統合され、導入のハードルを下げます。

  • Dynamic Intelligence Architecture:全チャネルのインタラクションを学習し、統合データプレーンで次の一手を先読み。
  • Low/No-Codeエージェント開発:テンプレートとサンドボックスで迅速に設計・検証。数週間で本番投入。
  • モデル・ミックス:Dialpad独自モデルと外部LLMを最適組み合わせ。用途に応じて選択。
  • オムニチャネル連続性:音声・チャット・SMS・WhatsApp間で文脈を保持。
  • Trust by Design:ポリシー強制、PIIマスキング、リアルタイム安全監視を標準装備。
  • Human-in-the-Loop:人へのハンドオフ時も履歴・意図・進捗をフル共有し、やり直しを排除。

会話AIの“会話”を、業務の“実行”に接続する。ここにアーキテクチャの肝があります。

はじめ方:ユースケース選定から本番運用まで

導入はスコープを絞った早期価値創出が鍵です。現場の摩擦が大きく、再現性のあるシナリオから着手しましょう。

  • 目的とKPIを定義:一次解決率、平均処理時間、CSAT/解決までのステップ数を仮説設定。
  • データ接続:CRM/在庫/予約/決済などを安全なコネクタで連携。最低限の権限設計を徹底。
  • テンプレート選択:小売・採用・自動車など業種別のNo-Code雛形を起点にドメイン調整。
  • サンドボックス検証:シミュレーションで推論の説明性ガードレールを確認。脱線時の回復動作もテスト。
  • 本番ローンチ:チャネルを段階開放し、A/Bでガイドラインやプロンプトを最適化。
  • 継続学習:成功/失敗のトレースを定期レビュー。人とAIの分業境界を継続更新。

30分未満でのエージェント作成や業種別テンプレートにより、初期構築の負担を下げられる点は現場にとって大きいです。参考:CRN

どこで効く?代表ユースケースと効果の出し方

“顧客が本当にやりたいこと”を最短手数で実現する場面に強みがあります。会話から意図を読み取り、裏側の業務を連続実行します。

  • 返品・返金:ポリシー判定→注文照会→ラベル発行→返金処理→通知まで自動化。
  • 予約・スケジューリング:空き状況の探索、候補提示、確定、リマインド配信。
  • 注文追跡・住所変更:配送API連携で到着予測を返答し、必要なら再配送手配。
  • アカウント手続き:本人確認→情報更新→監査ログ記録。
  • リード獲得/前さばき:スコアリング条件でMQL化し、商談設定まで自動。

KPIは一次解決率と平均手続きステップの削減、そして“人がやるべき会話”の比率増加で評価すると、価値が可視化されます。概要はUC Todayが詳しいです。

連携とセキュリティ:拡張と統制の両立

Agentic AIの肝は“つながり方”です。既存SaaSや社内システムへ安全なコネクタで接続し、最小権限・監査可能な経路でアクションを発行します。

  • ポリシー強制:顧客対応ポリシーや規約順守をリアルタイムに適用。
  • PIIマスキング:個人情報は入出力で自動マスキング。保管は用途最小化。
  • 安全監視:タスク実行を常時計測し、逸脱時にブレーキや人へのエスカレーション。
  • 文脈の継承:人へ渡す際も履歴・意図・前提を全共有し、顧客に同じ説明を繰り返させない

“Because these capabilities are natively built into Dialpad’s communications platform, no complex integrations are required.” とあるように、ネイティブ統合の恩恵は大きいです。Business Wire

市場の文脈:競合動向とDialpadの立ち位置

GenesysやFive9をはじめ、主要ベンダーはAIエージェント戦略を強化しています。その中でDialpadは単一プラットフォームでの“設計—実行—最適化”一体化を打ち出しました。

“The likes of NiCE, Genesys, and Five9 have made similar AI agent announcements. However, in delivering a single platform for building and deploying these agents, which continually learn over time, Dialpad hopes it will lead the charge into the next era of customer service.”
CX Today

独自モデル+外部LLMのモデル・ミックス、統合アナリティクス、オムニチャネルの文脈連続性、そしてTrust by Design。これらの総合力が差別化要素です。

導入の落とし穴と現実解:ガバナンスで“暴れないAI”に

エージェントが“動ける”ほど、ガバナンスは必須です。権限が強すぎると誤動作のリスクが増え、弱すぎると価値が出ません。

  • 最小権限設計:コネクタ権限はユースケース単位で細分化。昇格リクエストは人の承認に。
  • 可観測性:全アクションにトレースID。説明責任のための決定ログプロンプト監査を残す。
  • ガードレール:逸脱検知ルールと“停止→人へ”のフェイルセーフを先に作る。
  • 継続評価:週次でKPI/失敗例レビュー。プロンプトと方針を小さく頻繁に改善。

まずは価値の高い小粒案件で勝ち筋を作り、勝てる型を他業務へ横展開。これが定着の近道です。参考:Dialpad: Agentic AI Platform

まとめ:会話から成果へ。エージェントの時代を現場力で掴む

Agentic AI Platformは、会話体験をプロセス完結へと押し上げます。音声とテキストを跨ぎながら、既存SaaSと連携し、複数ステップの業務を安全に自動実行する力が核です。

重要なのは“どこで効かせるか”の設計と、動けるAIに相応しいガバナンス。小さく始めて、素早く学び、拡張する。顧客と現場に効く自律エージェント運用のベストプラクティスを、今から積み上げていきましょう。

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