産学がつなぐ、“AIで解く力”
社会課題をテーマに、生成AIで現場感を掴む
NECと早稲田大学公認の学生団体・早稲田キャリア研究会が、大学生向けに生成AIを活用した社会課題解決ワークショップを実施しました。
学生が実践でAIを使い、アイデアを形にし、チームで検証する設計です。
現場での意思決定に近いプロセスを短時間で体験できるのが特徴です。
AIの“すごさ”より、使いどころと使い方の設計を学ぶ内容でした。
開催の概要と背景
プログラムの骨子と狙い
本企画はNECのプロボノ活動と連動し、学生に課題解決の実践機会を提供するものです。
NEC社員がファシリテーションと運営を支援し、学生は生成AIを用いて社会課題起点の事業アイデア創出に挑みました。
- 主催・協働:NEC × 早稲田キャリア研究会
- 目的:生成AIを活用した課題解決プロセスの体験と、社会課題起点の事業構想
- 会場:NEC本社ビル
- 特徴:NECプロボノイニシアティブと連動、社員が企画・運営を支援
NECは、早稲田大学公認学生団体 早稲田キャリア研究会と協働で、大学生向けに生成AIを活用した「社会課題解決ワークショップ」を2025年8月に実施しました。
PR TIMES
詳細は各報道・発表をご参照ください。
PR TIMES|ニフティニュース|月刊私塾界
プログラム設計:1日で“構想から検証”まで
学びの導線をAI中心に再設計
限られた時間で最大の学習効果を得るため、プロセスは短サイクルで回す設計です。
AIは“答えを出す機械”ではなく、“思考の補助輪”として組み込まれました。
- 課題の定義:自治体・NPO等のリアル課題を抽象化し、論点を分解
- ユーザー理解:ペルソナとジャーニーをAIで素案化し、現実妥当性を議論
- 解決策の発散:生成AIで10案以上発散し、評価軸で絞り込み
- 価値仮説の言語化:便益式とKPIを定義し、実行可能性を検証
- ピッチ:2〜3分のショートピッチで反応を獲得し、次アクションを設計
NECが長年培ってきたAI・DX人材育成の知見も背景にあります。
BluStellar Academy for AIやNEC Generative AIの知見が実装に活きています。
使い方ガイド:生成AIを“チームの頭脳補助”にする
プロンプトの型と運用の勘所
チームでAIを使う際に効くのは、役割の明確化とプロンプトの再利用です。
以下の型をベースに、目的ごとにマクロ化するのが近道です。
- 役割付与:「あなたは社会課題の事業化に詳しいプロダクトマネージャーです。目的は◯◯。制約は◯◯。出力は箇条書きで。」
- 論点分解:「この課題をMECEで5〜7の論点に分解し、各論点ごとに検証仮説と指標を提案」
- 発散→収束:「解決アイデアを10案。次に評価軸(実現性・インパクト・独自性)でスコアリングし、上位3案の改良案を提示」
- 検証設計:「上位案のMVPを1週間・5万円以内で試す方法を3つ。計測KPIと成功基準も明記」
- ピッチ整形:「30-60-120秒の3パターンエレベーターピッチを作成。相手別にフォーカスを調整」
重要なのは“AIが出した答えの強みと弱み”をチームで吟味する時間です。
この往復が、質の高い意思決定につながります。
プロンプト術:精度と再現性を上げる小技
短時間でも“ぶれない”出力を引き出す
現場で効くのは、冗長な思考を促すよりも、出力の条件を明確にすることです。
以下のポイントをルール化すると、チームの再現性が安定します。
- 入出力の型を固定:入力テンプレ+出力フォーマット(JSON/表/箇条書き)を指定
- 境界条件を明示:期間・予算・対象・禁止事項を最初に宣言
- 参照の付与:根拠リンクや出典の明記を要求し、推測と事実を分離
- 比較で鍛える:「対案を3つ。A/B/Cの優劣と採用基準」で思考を深掘り
- エラー許容:不確実な推測は「仮説」、出典付きは「事実」のラベルを要求
プロンプトは“資産”です。
チームでテンプレート化し、学習サイクルを回しましょう。
アウトプットの質を上げる評価フレーム
Problem × Solution × Impact × Feasibility
短時間で良案を見極めるには評価軸の事前共有が効きます。
次の4軸は社会課題起点のプロジェクトと相性が良い設計です。
- Problem:誰の、どの痛みを、どれだけ減らすのか。定量・定性の両面で明確か
- Solution:AIが必然か。既存代替より優れる理由と、最小実装の姿が描けているか
- Impact:便益式(対象人数×1人あたり効果×持続期間)で試算できるか
- Feasibility:データ・体制・法務・コストのハードルを具体的に越えられるか
さらにRisk & Ethics(バイアス・著作権・プライバシー)を横串でチェック。
早い段階での“やらない理由”の洗い出しが、実装のスピードを上げます。
参加者の手応えとNECの狙い
“IT企業”から“社会価値の企業”へ
参加学生は、AIの実装が社会課題解決に直結する感覚を掴んだといいます。
NECの支援は、単なる技術提供ではなく、学びの設計そのものを支えるものでした。
NECは今後も、Purposeに掲げる「社会価値の創造」および「持続可能な社会の実現」に向け、学生に向けた課題解決型ワークショップの継続的な実施、ならびに産学連携の機会を創出します。
PR TIMES
関連するNECのAI・人材育成の取り組みは、以下でも確認できます。
NECのAIソリューション|AI時代の人材育成(NEC技報)
セキュリティ・著作権・バイアスへの配慮
大学×企業の現場で守るべきこと
実務寄りのワークショップこそ、情報と権利の扱いが重要です。
学生にとっては“最初の実務”になるため、明文化と練習が欠かせません。
- データ取り扱い:個人情報・機微情報は投入しない。必要なら匿名化・要約で代替
- 著作権:画像・文章の二次利用は出典を明記し、生成物の利用規約を確認
- バイアス:AI出力の偏りを認知し、影響を受ける当事者視点で再評価
- ガバナンス:大学ポリシーと企業ポリシーの整合をとり、適用範囲を明確化
早稲田大学も生成AI活用の基本姿勢を示しています。
生成AIなどの利用について(早稲田大学)
次の一歩:学生・大学・企業ができること
小さく始めて、学びを資産化する
学びを継続させるには、再現性のある仕組みが鍵です。
以下のアクションが現実的で効果的です。
- 学生:個人用プロンプト集を育てる。案件ごとに“評価軸”と“反省点”を記録
- 大学:学部横断のPBLで社会課題を扱い、企業メンターを定期招致
- 企業:プロボノ×人材育成を接続し、短期集中の共創ワークを継続開催
- 共通:成果物と運用レシピをオープンナレッジ化し、再利用を促進
今回の取り組みは、その“型”を示した好例です。
産学連携のアップデートとして横展開が期待できます。
まとめ:AIを“現実に効かせる”学びへ
技術の体験から、価値の実装へ
生成AIの価値は、ツールのすごさではなく、現実の課題を動かす力にあります。
NEC×早稲田キャリア研究会のワークショップは、その原則を学生の手に渡しました。
課題の定義、評価の軸、倫理の配慮。
この3点を押さえ、AIを“チームの頭脳補助”として設計することが、次の成長を加速します。
学びを資産化し、次の現場へ。
社会課題に向き合う若い知性が、AIとともに現実を変えていくはずです。
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