散らばったPDFが“知識”になる瞬間
社内のPDF、提案書、設計資料がフォルダに眠ったままになっていませんか。
検索しても見つからない、読んでも核心がわからない、そんな“非構造化”の壁を壊すニュースが届きました。
大日本印刷が、文書をAIが読める形に変換し、チャットで答えを返す「DNPドキュメント構造化AIチャットボット」を発表。
9月26日から提供開始とされ、業務の知識活用を一段引き上げる狙いです。
PDFなどの非構造化データをAIで読み取れる“AIリーダブルデータ”に変換し、チャットボットとして利活用する「DNPドキュメント構造化AIチャットボット」を開発し、2025年9月26日に提供を開始します。
出典:大日本印刷 ニュースリリース
サービスの輪郭とねらい
ポイントは、非構造化ドキュメントをAIが解釈できる粒度に整えてから、生成AIで回答を返す二段構えです。
従来の「とりあえずベクター検索」では拾い切れない要点や文脈を、構造化で補正します。
同社の独自「ドキュメント構造化AIサービス」と生成AIの活用基盤を組み合わせ、製造・金融・流通、そして公官庁・自治体まで幅広く展開。
属人化したナレッジの共有と再利用を促し、業務効率と生産性を底上げします。
独自技術の「DNPドキュメント構造化AIサービス」と生成AIの活用基盤を掛け合わせ、組織内での知識の再利用を促進します。
出典:大日本印刷 ニュースリリース
何ができるのか
- 複数形式に対応:PDF、Word、PowerPointなど日常文書の取り込みに対応
- 構造化パイプライン:見出し・段落・箇条書き・表・図表・脚注などを要素分解し、メタデータ付きで整形
- チャット検索:自然文で質問し、根拠スニペットや出典へのリンク付きで回答
- RAG活用:拡張検索生成で最新・社内限定の知識を安全に参照
- ナレッジ共有:提案書・報告書・設計資料・マニュアルの再利用を全社規模で推進
非構造化データを構造化処理して拡張検索生成(RAG)などに活用できると発表。
出典:ZDNET Japan
文書ファイル(PDF、Word、PowerPoint)をAIが参照し回答を生成。料金は1ユーザー月額5,000円から(最小5ユーザー)。
出典:IT Leaders
使い方のイメージ
導入から日常運用まで
まずは対象文書を選び、フォルダ単位でアップロード。
重要度の高い資料から始めるのが定着の近道です。
- 取り込み:既存フォルダやDMSから文書を読込み、重複排除やOCRを自動実行
- 構造化:見出し階層・表・図・キャプション・参照関係を抽出し、AIが読みやすい単位へ分割
- 検証:要所の抽出結果をサンプル確認。必要ならタグ付けや用語正規化を追加
- チャット:「設計変更の承認フロー」「過去の障害原因」など自然文で質問
- 根拠確認:回答の根拠スニペットと出典ページにジャンプし、意思決定を加速
運用後は、更新文書を差分取り込みするだけ。
属人的なファイル管理から、組織知の循環へと移行できます。
技術の肝をやさしく解説
鍵は「構造化(structure-aware)」です。
段落や箇条書き、表・図などのレイアウト構造を保ったまま知識化することで、文脈の断絶や引用ミスを抑えます。
- 階層保持:章・節・項の親子関係を保ち、粒度の異なる質問にも対応
- 表の意味抽出:ヘッダーとセルの対応を外さず、値の根拠を正確に提示
- 図表リンク:キャプション・本文の参照を結び、図解の意図を回答に反映
- メタデータ付与:日付・版・作成部門・機密区分など、検索や権限管理の軸を付ける
結果として、単なる全文検索+要約では届かない“業務で使える精度”に近づきます。
RAGの土台が強くなるほど、生成AIの回答は安定します。
非構造化データを構造化してRAGに活用、というアーキテクチャを明示。
出典:ZDNET Japan
提供開始と料金、導入ポイント
提供開始:2025年9月26日。
発表は9月5日に行われています。
料金の目安:1ユーザー月額5,000円(税込)から、最小5ユーザー構成。
スモールスタートしやすい価格設計です。
- 推奨の始め方:ユースケースを1つに絞り、KPI(検索時間削減など)を先に決める
- 文書選定:提案書・報告書・設計資料・マニュアルなど、再利用価値の高い領域を優先
- 語彙整備:社内用語の表記ゆれを最初に正規化しておくと精度が伸びやすい
- 運用:差分更新のルーチン化と、根拠リンクのレビュー文化をセットにする
提供開始日と概要は公式発表より。
出典:大日本印刷 ニュースリリース
料金・対象ファイル形式の記載。
出典:IT Leaders
どんな現場で効くか
製造・金融・行政のケース
- 製造:設計変更履歴や過去の不具合報告から、原因トレースと対策の再利用を高速化
- 金融:商品比較表や規程・稟議フローを構造化し、コンプラ順守の回答を支援
- 行政・自治体:要綱・要領・FAQ・議事録を横断して、住民対応や内部照会を迅速化
「誰が知っているか」から「どこに根拠があるか」へ。
ナレッジ起点の業務へと視点が変わります。
幅広い業界・公官庁・自治体を対象に展開。
出典:Impress Cloud Watch
競合との違いと、定着のコツ
一般的な「社内検索系AI」は、ファイルを分割してEmbeddingするだけのことも少なくありません。
今回の肝は構造化の精度と根拠提示です。これが回答の一貫性と説明可能性を担保します。
- 違い:構造化ありきのRAGで、表・図を含む実務文書に強い
- 導入の要点:ユースケース特化、語彙統制、差分運用、根拠レビューの4点セット
- リスク対策:生成の“言い切り”に注意し、根拠ページへ必ず遷移して検証する文化を
小さく始めて、勝ち筋が見えたら対象文書の幅を広げる。
この漸進設計が、社内AIの定着率を押し上げます。
まとめ
「DNPドキュメント構造化AIチャットボット」は、非構造の壁を越えて、文書を“答えを返すデータ”に変える提案です。
構造化×RAGの地力で、知識の再利用を当たり前にしていきます。
まずは一番“詰まっている”領域から。
9月末の提供開始に合わせ、スモールスタートの準備を進めましょう。
サービスの正式発表と提供開始時期の報道。
出典:EnterpriseZine / 出典:Excite(PR TIMES)
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