現場が動き出すAIトライ、勝ち筋が見えるとき
LayerXの生成AIプラットフォーム『Ai Workforce』が、NRIデジタルの実践型支援プログラム『AX OnBoard』に採用されました。
2025年9月4日の発表で、いま企業のAI活用を“机上の検討”から“業務の手触り”へ押し上げる取り組みが、強い伴走体制とともに走り始めます。
発表の骨子は、複雑な業務をAIに学習させ、ドキュメント作成やレビューを自動化する『Ai Workforce』を、短期集中のPoCプロセスに組み込み、参加企業が実データで効果検証できるというものです。
“生成AIの社内展開を前に進めたい”、でもどこから始めるべきか悩む企業は多いはずです。
今回の連携は、現場の仕事に密着したユースケース設計、短期間の試行、定量評価をワンセットにし、意思決定を速く、リスクを低くする道筋を示します。
その意味で、単なるツール導入ではありません。「使い倒せるAI」へ向けたプロセス設計の採用とも言えます。
「生成AIプラットフォーム『Ai Workforce』は、NRIデジタルの実践型AI導入支援プログラム『AX OnBoard』の公式ツールとして採用されました。」
出典:PR TIMES
『Ai Workforce』と『AX OnBoard』の狙いと全体像
プラットフォームの核
Ai Workforceは、企業固有の業務知識を取り込み、ドキュメントの管理・作成・レビューといったナレッジワークを自動化・高度化するために設計された生成AI基盤です。
主な強みは、社内規程や業務手順、既存テンプレートを踏まえた一貫した品質のアウトプットを継続的に出せること。
汎用チャットでは届きにくい、“組織の癖まで含めた実務水準”を目指します。
プログラムの骨格
AX OnBoardは、1〜2カ月の短期で課題ヒアリング→適用領域選定→プロトタイプ→評価までを走り抜ける実践型プログラムです。
今回の採用により、参加企業は自社のドキュメントやデータを用いて、処理精度や業務効果を定量的にトライアルできます。
意思決定のボトルネックになりがちな「抽象論」から、具体的な成果と改善点に焦点を移せるのが最大の価値です。
効くユースケースはどこか—現場の“摩擦”をAIでほどく
高確度で始められる領域
まずは、反復・規程準拠・証跡が求められる文書業務から着手するのが堅実です。
以下は、国内大手での実証でも効果が出やすい代表例です。
- 提案書・稟議書・議事録の生成と標準テンプレート整形(体裁と要点のブレ低減)
- 契約・仕様書・社内規程の整合性チェック(差分指摘、条項の矛盾や抜け漏れの検知)
- レビュー・査読の観点ガイド化(過去レビュー観点の学習とスコアリング)
- 顧客対応ナレッジの要約・更新(最新情報反映と検索性向上)
これらは「生成→整形→検証→配布」という繰り返し構造を持つため、人が価値を出す判断点を残しつつ、周辺を機械化しやすいのが特徴です。
結果として、作成時間の短縮、レビューループの削減、品質の平準化が同時に狙えます。
使い方の道筋—PoCから本番運用へ、無理なく上げていく
短期PoCでやるべきこと
AX OnBoardにおけるPoCは、仮説→検証→改善を高速に回すのが肝です。
おすすめの進め方は次の通り。
- 対象業務の最小スコープ化:1〜2テンプレートに絞り、期待指標を先に決める
- データ整備:最新版テンプレート・過去完成品・レビュー観点をセットで投入
- 評価基準の明確化:処理時間、修正回数、体裁遵守率、指摘再現率など
- ガードレール設定:禁則事項、参照ソース、出力形式をプロンプトで固定
- 週次の改善サイクル:失敗例から学習、テンプレと観点を都度アップデート
この設計だと、1カ月でも「やめる/広げる」の判断材料が手に入ります。
広げるときは、テンプレやレビュー観点など“再利用できる成果物”を横展開するだけで、別部門への移植コストも低く抑えられます。
技術アーキテクチャとセキュリティ—“安心して預けられる”条件
アーキの考え方
Ai Workforceは、企業内の規程やナレッジに基づく生成とレビューを中核に据えた業務密着型の生成AI基盤です。
設計としては、テンプレート制御(出力フォーマットの一貫性)、観点ベースの自動レビュー(社内基準への適合チェック)、監査ログ(誰が何を出力し承認したかの追跡)といったエンタープライズ要件が重視されます。
セキュリティとデータ主権
AI導入ではデータ主権と社外伝送リスクが常に論点です。
NRIグループは、金融機関向けに高セキュリティなAI環境の提供を進めており、国内データセンター活用や厳格なデータ制御の取り組みを公表しています。
この文脈と今回の実践プログラムの組み合わせは、“業務適用の安全性”に関する懸念を現実的に下げるシナリオと言えます。
「導入企業は『AX OnBoard』のプロセスを通じ、自社の実データを用いてAi Workforceの効果や処理精度をトライアル可能に。」
出典:PR TIMES
プライバシー/コンプライアンス要件が厳しい業界でも、クローズド環境での試行→評価→本番という王道の階段を、手戻りなく上れるのが実務上の効用です。
他の支援との違い—“ユースケースの深さ”と“伴走の濃度”
なぜ今、Ai Workforce × AX OnBoardなのか
生成AIの導入支援は数多くありますが、今回の組み合わせの特徴は業務ドキュメント特化の強みと短期集中の実装伴走が噛み合っている点です。
一般的な「ワークショップ止まり」ではなく、実データで精度・効果を測り、次の投資判断へ繋げるところまで踏み込みます。
- 深さ:テンプレ・観点・監査ログまで作り込み、運用に耐える設計で評価
- 速さ:1〜2カ月で効果を可視化。長期化のコストと熱量低下を防ぐ
- 広がり:再利用できる成果物を残し、横展開を容易にする
この3点が揃うと、「PoC芸人」にならない、つまり成果が現場に定着するAI導入に近づきます。
“まずは一仕事終える”ための道具立てとして、合理的な選択肢です。
指標で見る成果—意思決定を支えるKPI設計
見るべきKPI例
短期PoCの成否は、「どの指標で勝ちを定義するか」に左右されます。
以下は、文書生成・レビュー系で効きが良い指標例です。
- 作成TAT(初稿までの時間):基準テンプレ投入後の短縮率
- 修正回数:レビュー往復回数の減少、観点別の再発率
- 遵守率:体裁・必須項目・禁則事項の遵守スコア
- 再現率/適合率:既存レビュー指摘の再現精度、過検出の抑制
- 利用率:アクティブユーザー割合、週次利用回数
数値で語れると、投資判断が前に進みます。
そして“勝てる型”の抽出ができれば、他部門へは型の移植で加速できます。
まとめ—「使えるAI」を「使い倒せるAI」に
『Ai Workforce』の採用は、業務密着型の生成AIを短期で検証し、成果を定量で示すための実装プログラムが揃ったことを意味します。
AX OnBoardの伴走と組み合わさることで、“何となく良さそう”から“確実に効く”へと一段引き上がるはずです。
次の一歩はシンプルです。
反復が多く、規程準拠が求められ、証跡が残る文書業務から小さく始め、KPIで評価し、勝ち筋を量産する。
その積み重ねが、組織に「使い倒せるAI」文化を根づかせます。
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