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SAP、Business Data Cloudを一般提供開始しJoule AI機能を強化

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データがビジネスを動かす新しい常識

2025年に入り、データとAIを切り離して語る企業はほぼ皆無になりました。
中でもSAP Business Data Cloud(以下、SAP BDC)は「データファブリック」という抽象概念を、実際の現場で使えるサービスに落とし込んだ点で注目を集めています。
加えて、自然言語AIコパイロットJouleのスキル拡張も正式発表され、財務・調達・営業などSAPアプリ全体で“聞くだけで答えが返る”体験が実現しました。
単なる新機能の寄せ集めではなく、「データ統合 → リアルタイム分析 → 自動実行」という一連の流れを一気通貫で提供する点がポイントです。
この記事では最新リリースを基に、仕組みから導入効果までを深掘りします。

SAP Business Data Cloudとは何か

SAP BDCは、SAP Datasphere、Analytics Cloud、Business Warehouseを統合したフルマネージドSaaSです。
最大の特徴は、“SAPデータも非SAPデータも複製せずにそのまま使える”というゼロコピー連携。
たとえば販売実績はS/4HANAに、マーケティング指標は外部SaaSに、それぞれ保存したままでも、共通のセマンティック層でビジネス用語を自動マッピングします。
これにより、部門間で定義がズレた売上指標を個別に修正する手間が激減。
公式リリースでも「データ整合性とコンテキストの維持を両立した統合基盤」と強調されています。出典

ゼロコピー統合で変わるリアルタイム分析

SAP BDCはDatabricksとの提携により、物理コピーなしでレイクハウス上のパーティションに直接アクセスします。
ETL待ち時間が消えるため、データサイエンティストは数時間単位のバッチではなく秒単位でモデルを更新可能。
さらに、連合型機械学習(FedML)により機密データは社外に持ち出さずに学習を実施。
セキュリティと俊敏性のバランスが取りやすい点が大企業の採用を後押ししています。

  • 在庫変動のリアルタイム可視化で欠品リスクを30%削減
  • 財務早期決算を15→5日へ短縮
  • CO2排出量ダッシュボードを即時更新しESG報告を自動化

これらは早期導入企業で報告された実績値です。

Jouleがもたらす“質問するだけ”の業務変革

生成AIコパイロットJouleは、2025年末までに1,600以上のスキルを提供予定。参照
今回特に評価されたのがエージェント機能です。ユーザーから自然言語で指示を受けると、関連システムにAPI呼び出しを行い、必要なデータ取得・アクション実行まで完結します。

「次四半期の需要予測を最新の受注残と突き合わせ、人員計画を更新して」
デモ動画より

従来はアナリスト→人事→マネージャと数日かかっていた調整が、チャット一往復で終了します。
Jouleは学習時に顧客データをLLMへ送らない設計のため、機密保持要件が厳しい製造・金融でも導入ハードルが低いのも魅力です。

導入ステップとユースケース

1. スモールスタートを徹底

まずは既存SAPクラウドの中でデータ品質が高い領域を選びます。
購買や財務はマスタ統合が進んでいるケースが多く、ROI試算が容易です。

2. ナレッジグラフを定義

SAP Knowledge Graphでビジネス概念をモデリングし、BDCへ同期。
これがJouleエージェントの「常識」になります。

3. Joule Studioでスキル開発

ノーコードUIから外部LLMを選択し、プロンプトとガードレールを設定。
たとえば営業部門向けに“契約更新アラート”スキルを30分で実装した事例もあります。

4. KPIとモニタリングを自動連携

SAP Analytics Cloud上に生成したダッシュボードをチームごとに配信。
Jouleへ「今週の異常値は?」と尋ねれば、根因分析まで返す構成が定番です。

気になるライセンスとROI

SAP BDCはユーザー数ではなくデータ容量+接続先で課金。
目安として500GB・5接続の場合、月額約250万円から。
一見高価ですが、オンプレDWH維持費・個別ETLツール・BIライセンスを合算すると、3年Total Costが▲18%になったケースが公表されています。
JouleはSaaS内蔵分が無償、独自エージェント追加は従量課金。
データガバナンスやAI監査ログも標準で出力されるため、外部製品を別途導入するよりもランニングコストを抑えやすい点が評価されています。

まとめ――データとAIを味方に

SAP BDCとJouleの組み合わせは、“統合されているからこそ強い”ことを示しました。
バラバラに最適化したシステムでは実現が難しかったリアルタイム意思決定を、データ複製ゼロ・自然言語操作というユーザー体験で提供します。
今後はSAP外のSaaS連携や、Perplexityとの非構造化検索もロードマップに入り、データソースの垣根はさらに低くなる見込みです。
「質問すれば答えが返り、そのまま業務が動く」——そんな日常を自社でどう活かすか、早めにPoCを回してみる価値は大いにあるでしょう。

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