クラウド一辺倒からの転換点:ローカルLLMという打ち手
機密データを抱える国内企業にとって、生成AIを“どこで”走らせるかは経営課題になりました。
クラウドの俊敏さは魅力ですが、データ主権やレイテンシ、ランニングコストの予見性などで限界も見えています。
そこで注目が高まっているのが、オンプレミスで動作するローカルLLMです。
社内ナレッジや設計情報、顧客データを外部に出さずに推論・学習を回せることは、セキュリティだけでなく品質にも効きます。
ドメイン固有のRAG(検索拡張生成)や小規模な追加学習を内製で回せれば、応答の一貫性と再現性が上がり、現場の信頼が生まれます。
加えて、GPUの厚みと運用最適化が進めば、長期TCOの安定化も狙えます。
マクニカ×neoAIの提案が刺さる理由
協業の骨子と差別化
2025年3月、マクニカとneoAIがローカルLLMのSIで協業を発表しました。
マクニカはハードウェア選定から基盤構築・運用を、neoAIはLlama 3.1やGemini 2、独自日本語LLMを含むモデル実装とRAGを担う構図です。
構築から導入後の伴走支援までをワンストップに束ねる点が、導入加速の鍵になります。
neoAIは、最新のLlama 3.1、Gemini 2や、neoAI独自開発の日本語LLMなど、さまざまなローカルLLMを活用し、RAGを含めた生成AI環境をオンプレミスで提供するとした。
出典:クラウドWatch(Impress)
構築から導入、伴走支援まで一気通貫で企業の生成AI活用をサポート。
出典:IT Leaders
- 強みの補完:マクニカのインフラ×neoAIのモデル/RAG
- 選択肢の広さ:オープン/商用モデルを含むポートフォリオ
- 運用まで設計:導入後の精度改善・SLA・コスト最適化に踏み込む
実装視点で捉えるアーキテクチャ:RAG/微調整/運用の勘所
オンプレ基盤の要件
GPUサーバ、NVMeストレージ、10/25/100GbEの東西トラフィック、そしてKubernetesやSlurmによるスケジューリングが定番です。
推論系は低レイテンシ、学習系は高スループットで設計方針が異なるため、ワークロード分離とQoS制御が効きます。
RAG設計の肝
- 埋め込み戦略:多言語か日本語特化か、ドメイン語彙への適合
- インデックス:HNSW/IVF/ScaNN等とメタデータでハイブリッド検索
- ガードレール:プロンプトルール+検証用再ランクで幻覚抑制
モデル戦略
用途に応じて7B〜13B級の軽量モデルで高並列推論を狙うか、70B級を絞って高精度領域を攻めるかのトレードオフがあります。
INT8/FP8/INT4の混合量子化とKVキャッシュ最適化により、スループット/コストの最適点を探るのが定石です。
現場で効く使い方:ユースケースと体験設計
典型ユースケース
- 製造・設計:図面・仕様書・試験成績の横断RAG、変更影響の要約
- 金融・保険:社内規程/法令照会の根拠付きQA、文書生成のリーガルチェック
- コールセンター:対応ログの要約とナレッジ化、次善提案の提示
- 開発組織:コードベースRAG、設計レビューの論点抽出
体験設計のコツ
- 根拠提示:回答と同時に参照ドキュメントのスニペットを添付
- バージョン可視化:モデル/ベクトル索引の世代管理で追跡可能性を担保
- フィードバック回収:簡易な👍/👎と理由入力で継続学習
導入ステップ:SIでつまずかない進め方
実行ロードマップ
- 0. Fit診断:ユースケース優先度・データ可用性・セキュリティ制約を棚卸し
- 1. PoC:1〜2ケースでRAG最小構成、評価指標(Faithfulness/Latency/CSAT)を設定
- 2. パイロット:権限連携(SSO/ABAC)、監査ログ、モデル監視を実装
- 3. 本番:SLA策定、ガバナンス運用、継続的評価(ゴールデンセット)
マクニカ×neoAIの活かしどころ
- マクニカ:GPU選定、ネットワーク/ストレージ設計、K8s/Inferenceサービング最適化
- neoAI:モデル選定・日本語強化、RAG設計、チューニングと評価パイプライン
AI環境構築の専門知識を持つマクニカと、生成AI活用における豊富な実績とノウハウを持つneoAIが包括的な支援体制を組み、構築から導入、伴走支援まで一気通貫でサポート。
出典:日本経済新聞(プレス)
セキュリティ・コスト・性能の三点均衡
セキュリティ
- データ境界:オンプレ閉域+ゼロトラスト分割、DLPと監査ログの一体設計
- PII対策:匿名化・マスキング、redactionエンジンの前段適用(参考:マクニカのPrivate AI取り扱い)
- ガバナンス:プロンプト管理、モデル切替の申請/承認フロー、リーガルレビュー
TCO/性能
- キャパ計画:同時接続×トークン/秒から必要GPUを逆算、ピーク/平準化を分離
- 最適化:量子化・KV圧縮・連続バッチでスループット向上、observabilityで増強判断
- 費用見通し:クラウド従量の不確実性を回避し、オンプレは償却+運用で予算化
ロックインを避ける設計指針
開放型スタック
- モデル抽象化:OpenAI互換API/MLServer等で呼び出し統一
- データ標準化:埋め込み・索引のスキーマ管理、parquet/FAISS等の持ち運び
- コンテナ:OCI準拠&IaCで再現性確保、オンプレ/エッジ/クラウドに可搬
- 監視・評価:メトリクスと評価セットをツール非依存に保管
この指針に沿えば、モデル更新やGPU世代交代の波が来ても、アプリ層を守りながら中身を入れ替えられます。
調達・運用・開発の三者で仕様を握ることが、長期の安定運用に直結します。
総括:ローカルLLMの実装力が競争力になる
ローカルLLMはセキュリティ対策の“守り”だけではありません。
業務知の活用速度を上げ、現場の判断精度を底上げする“攻め”の施策です。
マクニカ×neoAIの協業は、その実装力と伴走支援で、国内企業の壁を一つ越えさせる提案と言えます。
まずは重点ユースケースで小さく始め、RAGと評価の回路を整えましょう。
そのうえでGPU/モデル/データの三位一体でスケールさせれば、予算に優しい継続改善サイクルが回ります。
次の競争は、モデルそのものよりも“どう実装し運用するか”で決まります。
参考リンク:

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