MENU

AIデータセンターの電力問題に挑む:HiTHIUMがリチウム×ナトリウムの蓄電ソリューションを発表

目次

電力が“AIの律速段階”になる前に

生成AIの拡大は、計算力だけでなく電力インフラを直撃しています。GPUが並ぶAIデータセンターでは、瞬間的な負荷変動とベースロードの両方に応える電力が必要です。

ところが、系統からの受電・変電・UPS・蓄電のいずれかがボトルネックになると、拡張計画は止まります。いま注目されるのが、長時間蓄電(LDES)を含む蓄電アーキテクチャの刷新です。

「データセンター電力需要は、2023年総電力需要の4.4%。AIでさらに増える」
日経XTECH

AI用ワークロードはパワーと時間の“幅”が広いのが難題。だからこそ蓄電もフルデュレーションが要ります。

Eco-Day発表:HiTHIUMの狙いと文脈

中国の蓄電大手HiTHIUMは、Eco-DayでAIデータセンター向けの“フルデュレーション”蓄電ソリューション構想を披露。リチウムとナトリウムを補完的に組み合わせ、瞬発力から長時間供給まで一気通貫で支える方針を示しました。

同社はLFP系リチウム蓄電で急伸しており、量産・プロジェクト実績も拡大中です。これを土台に、価格と温度耐性に優れたナトリウムを重ねることで、AI需要の“谷”も“山”も均したい考えです。

「HiTHIUMは蓄電システムで急成長、シリーズCで約870億円調達。中国での出荷成長率は首位」
36Kr Japan

注:本稿は同社イベント発表の方向性を整理したもので、個々の仕様はローンチ時点の正式資料を参照してください。

リチウム×ナトリウムのハイブリッドという発想

役割分担の明確化

  • リチウム(LFP): 高いサイクル寿命と電力密度。ピークシェービング、秒〜分オーダーのスパイク吸収に強み。
  • ナトリウム: 低温特性とコスト優位が期待。長時間放電や日内・日跨ぎの平準化に適性。

AIのトレーニングや大規模推論では、秒単位のスパイクと、時間帯での山谷が共存します。単一化学でカバーすると過剰設計やコスト高に陥りがち。そこで化学の分業で、性能とLCOEを最適化するのが合理的です。

「統合された冷却と電力ソリューションが、この変革を管理する鍵」
Forbes JAPAN

冷却・配電とセットで最適化してこそ、バッテリー投資は生きます。ハイブリッド蓄電は、その前提を満たしやすい設計思想です。

“フルデュレーション”の中身:AIDCを止めない時間設計

時間軸で分解する

  • ミリ秒〜数十秒: 瞬時電圧降下(sag)やGPUスパイクの吸収。インバータと高Cレート蓄電の協調。
  • 分〜1時間: デマンドレスポンス、ピークシェービング。料金最適化と系統負荷平準化。
  • 数時間〜日内: 再エネ追従とCFE向上。AIバッチや夜間トレーニングを支える。
  • 日跨ぎ: 気象変動や系統制約の吸収。LDESの領域。

HiTHIUMのアプローチは、この全時間帯をターゲットに据えます。短時間はLFP長時間はナトリウムで、システム全体の効率とコストを最小化する狙いです。

「リチウム蓄電は省スペースでUPS刷新の切り札。1ラックで300kW×10分の供給も」
クラウドWatch

短時間領域の即応性は既存のLFPの得意分野。そこにナトリウムを足すことで、日内の“粘り”を作ります。

導入と運用:データセンターへの実装ポイント

設計・使い方の基本

  • 48V系と配電最適化: サーバー側は48V移行が進みます。損失低減と発熱抑制に効くため、蓄電・変換も合わせて検討を。ROHM
  • BBU/UPSの役割整理: ラック内BBUは瞬断対策、棟内BESSはピーク/時間移送。階層ごとにSLAを割り振る。Dexerials
  • エネルギーマーケット連携: 余力はアグリゲーションで収益化。AIワークロードの谷で系統サービスへ。
  • 冷却との同時最適化: 液冷普及で電力プロファイルが変わる。電源変換・バスウェイの設計見直しを。Forbes JAPAN

運用オペレーション

  • ワークロード連動EMS: ジョブスケジューラとEMSをAPIで連携。学習バッチ開始前にSoCを事前充填。
  • 劣化の偏り制御: LFPとナトリウムのサイクル配分をアルゴリズムで最適化。TCOを平準化。
  • テストと監査: 需給逼迫想定のプレイブックを作成。年2回のブラックスタート演習。

競合・補完の地図:HSC/スーパーキャパシタ、BBU、液冷、系統

スパイク吸収はハイブリッドスーパーキャパシタ(HSC)やスーパーキャパシタが台頭。ミリ秒領域はキャパシタ、秒〜分はLFP、時間域はナトリウムというレイヤリングが定石化しつつあります。

「HSCは高出力とエネルギー密度、長寿命・安全性から次世代DCのキーデバイスに」
武蔵エナジーソリューションズ

ラック内のBBUは瞬断対策のファーストライン。棟内BESSや系統用蓄電と役割分担し、全体のPUE/CFEを引き上げます。

「Meeting the AI Data Center Power Challenge」
onsemi

また、AI冷却の液冷化は配電アーキテクチャの再設計を迫ります。AC-DC、バスウェイ、保護・監視の選定は、蓄電と不可分のテーマです。

投資指標:ボトルネックを可視化して意思決定

見るべきKPI

  • IT負荷追従度(負荷追従誤差): スパイク追従でGPUスロットリングやジョブ失敗を防止。
  • ピークカット率/契約電力削減額: 料金最適化の即効性を定量化。
  • エネルギーシフト量(kWh/日・月): 再エネ追従とCFEの改善度を把握。
  • 劣化コスト/kWh: 化学ごとのサイクル配分最適化に直結。

実装は段階導入が現実的です。まずLFPで秒〜分を押さえ、つぎにナトリウムで時間域を拡張。系統混雑・接続待ちが長期化する地域ほど、蓄電のシャベルレディ性は投資価値が高まります。

「LIBはUPS置換やピーク抑制で投資対効果を高められる」
日経ビジネス

まとめ:AIインフラを“電力から解放”する

HiTHIUMのリチウム×ナトリウムは、AIデータセンターの電力課題に対する合理的な解です。短時間の俊敏性と長時間の粘りを両立させ、フルデュレーションでSLAと電気料金、環境目標を同時に満たします。

冷却・配電・BBU・BESS・系統の各レイヤーを役割分担し、ジョブスケジューラとEMSを統合。これがAI時代の新しい“電力OS”です。次の拡張計画は、まず電力アーキテクチャから見直しましょう。

参考リンク

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次