会話がそのまま絵になる時代へ──“シネマティック”を最短距離で
Abacus AIは12月11日、対話型AIプラットフォーム「ChatLLM」に、Googleの最新画像モデル「Nano Banana Pro」を統合したと発表しました。
このアップデートで、会話ベースのやり取りから高速に“映画的(シネマティック)”な静止画を出し分ける制作体験が可能になります。
特徴は、遅延の少ない連続生成と、テキスト入りビジュアルや高度な色調表現まで一気通貫で仕上げられるところ。
マーケティング、エンタメ、ECの現場で求められる“速さと画づくり”を、LLMの対話と画像エンジンの一体化で実現します。
何が変わる?Nano Banana Proの実力と背景
プロダクションクオリティを素早く
- 4K級の高解像度と正確なテキスト描画で、ポスターやパッケージのモックも下処理なしで実用域へ。
- 複数画像の融合(最大14枚)と人物一貫性(最大5名)で、シリーズ物の広告やカットバリエーションが破綻しにくい。
- シネマティックな色調・アングル・被写界深度を自然言語で制御。9:16〜21:9までの画面設計も柔軟。
- Grounding(検索連携)で、図解や情報グラフィックの正確性が向上。
- SynthIDのデジタル透かしで、生成画像の透明性を確保。
Googleの開発者ドキュメントも、会話型での生成・編集・反復を前提に設計されていることを明言しています。
“Gemini can generate and process images conversationally… allowing you to create, edit, and iterate on visuals with unprecedented control:”
またGoogleはNano Banana Proの公開時に、同モデルがGemini 3 Pro Imageとして刷新されたことを強調しました。
「本日、最新の画像生成および編集モデルの Nano Banana Pro(Gemini 3 Pro Image)を公開します。」
ChatLLM統合がもたらす“会話ドリブン制作”
プロンプトからディレクションへ
従来は「テキストを投げて、待って、微修正」という往復が中心でした。
ChatLLM統合では会話が主語になります。意図の齟齬をその場で解消し、光・構図・質感・文字組みまで段階的に詰められます。
- 低遅延の連続生成:一回ごとの往復を短くし、良い案に素早く収束。
- 指示の“保持”:スタイル・世界観・色の粒度などを会話履歴で共有・継承。
- 一貫性管理:参照画像と口頭ディレクションを合わせ、シリーズの統一感を担保。
この“会話ドリブン制作”は、とりわけECの商品バリエーションや連載型のSNS/キャンペーンで効きます。
初稿から本稿までの距離が縮み、修正負荷のピークが滑らかになります。
使い方ガイド:Abacus AIのChatLLMでシネマルックを引き出す
セットアップと基本オペレーション
- ChatLLMを開き、画像生成を有効化。モデルからNano Banana Proを選択。
- アスペクト比(例:21:9 / 16:9 / 9:16)とスタイル(cinematic / film look / moody)を指定。
- 参照画像がある場合はアップロードし、「光は左から」「衣装はA、背景はB」など要素分担を明記。
- 初回生成後、「もう少しフィルムグレインを強めて」「被写界深度を浅く」のように口語で差分指示。
- 文字組みが必要なら、フォントの雰囲気や字間、配置を自然言語で微調整。
試せるプロンプト例
- 「黄金の夕日、低い逆光、21:9のワイド。都会の屋上で風に揺れるコート。青とオレンジのコントラストを強調、シネマティックなカラーグレーディング」
- 「EC向け。白背景ベースだが硬すぎない。柔らかい拡散光、商品の質感優先。横位置16:9、商品名の英字を正確に描写」
- 「参照Aの人物と参照Bの背景を融合。夜景、雨粒のボケ、浅い被写界深度。ネオンのリフレクションを追加」
会話を続けながら“光・レンズ・色・構図・文字”を順に詰めると、短時間で映画的なルックに到達します。
MidjourneyやImagen系との違いと使い分け
アーティスト志向 vs. 一体化ワークフロー
Midjourneyは独自の作風とコミュニティ駆動の進化が強みで、スタイル探索に優れます。
一方、Nano Banana Proは会話的推論×レイアウト制御×文字の正確性を統合し、商用ビジュアルの「直し」に強い。
Googleのモデル系(従来のImagen系からの発展を含む)は、Groundingやテキストレンダリングの安定が進み、情報図解・UIモック・広告レイアウトなど“実務系ビジュアル”に適性が高い印象です。
Abacus AIは複数モデルを横断実装しており、推奨モデルにもNano Banana Proを挙げています。
“Our SOTA image models include GPT Image, Nano Banana, FLUX Pro… For high-quality image generation, we recommend Flux-1 PRO, Nano Banana Pro and GPT Image.”
結論として、作風探索はMidjourney、実務レイアウトと高速反復はNano Banana Pro+ChatLLMという住み分けが現実的です。
ビジネスインパクト:SaaS一体化が加速する制作オペレーション
マーケ/エンタメ/ECでの効果
- マーケティング:キャンペーンKV、バナー、LPモックまでを会話で一貫制作。文字崩れが減り、入稿前の直しが軽量化。
- エンタメ:カラースクリプト、キービジュアル、絵コンテ生成が高速化。参照画像からの一貫性維持でシリーズ展開が安定。
- EC:角度違い・色替え・季節演出の量産が容易。人物・背景・商品を差し替えながら表現を揃えられる。
運用面では、会話履歴=ディレクション資産になるのが大きい。
スタイルガイドやNG集をプロンプトに織り込み、ブランドの“口癖”として共有できます。
加えて、SynthIDによる透明性担保が社内ガバナンスに寄与。生成物の出所確認や、コンテンツリスク管理の工程を明確化できます。
実運用のTips:速くて“映画的”を安定供給する
プロンプトは「物語+光学パラメータ」
- 物語:人物の感情、時間帯、場所、天候。状況設定が画の“必然性”を生む。
- 光学:光源の向き・温度、被写界深度、レンズ焦点距離、グレイン量。言語で指定しやすい粒度に分解。
- 色:青橙コントラスト、モノクローム、セピア、シネマグレード。ムードワードとセットで。
参照画像の与え方
- 役割分担:Aは人物、Bは背景、Cは配色、と用途を明記して混乱を避ける。
- 段階投入:初稿は少ない参照で“芯”を作り、仕上げでディテール参照を追加。
- 一貫性:シリーズ案件はコア参照を固定し、トーンの揺れを押さえる。
連続生成のコツ
- 各ラウンドで1〜2個の変更点に絞る。多指示同時は“ブレ”の原因に。
- 良かった要素を明示的に継承指示(光・構図・表情など)。
- 文字入れは位置・階層・余白を言語で規定し、再現性を上げる。
価格・導入メモ:最新仕様の確認ポイント
Abacus AIのChatLLMでは、複数の画像モデルが利用可能で、用途に応じた選択ができます。
料金や実行上限は変動があるため、最新のドキュメント/管理画面での確認を推奨します。
“For high-quality image generation, we recommend Flux-1 PRO, Nano Banana Pro and GPT Image.”
Google側の発表では、Nano Banana Proの透かし(SynthID)対応や、上位プラン/APIでの利用条件が案内されています。
詳細は公式情報を参照してください。
「生成されたすべての画像には目に見えない電子透かし『SynthID』が埋め込まれており…」
技術仕様(最大入力画像枚数、解像度、Grounding挙動など)の細部は、Googleの開発者ドキュメントと各プラットフォーム実装に依存します。
導入時は・出力解像度上限・同時参照数・レイテンシ・コスト見積・透かしポリシーをチェックリスト化しておくと安全です。
まとめ:対話×画づくりの“現場力”を底上げする統合
ChatLLMに「Nano Banana Pro」が入った意味は、単なる“高画質化”にとどまりません。
会話を中核に、文字を含むシネマティックなビジュアルを短時間で反復改善できる運用基盤が整った、ということです。
スタイル探索に強いMidjourney、汎用連携に強いGPT Image/Fluxと併存しつつ、実務レイアウトの精度×スピードでNano Banana Proは存在感を増します。
Abacus AIの一体化SaaSとしての提供は、チームの制作プロセスを“会話”で統合し、成果物の品質と歩留まりを底上げしていくはずです。
次の一手は、ブランドの“口癖”をプロンプトに落とし込むこと。
会話履歴を資産化し、シーン別のテンプレートを磨き上げるほど、成果は指数的に安定します。

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