LFM2.5-24B-A2Bは、クラウドAPIにすべてを任せず、手元のPCやワークステーションでAIエージェントを動かしたい開発者にとって有力な新候補です。Liquid AIが2026年10月13日に発表したオープンウェイトの推論モデルで、総24Bパラメータながら1トークンあたりの有効パラメータを約2B級に抑えるMoE構成、131Kトークンの長いコンテキスト、llama.cppやMLXなどでの実行対応が特徴です。
ただし、万能な「ローカル版の最強チャットAI」と見るより、ツール呼び出し、手順実行、社内文書を使ったエージェント処理に向いたモデルとして検討するのが現実的です。この記事では、公式発表で確認できる仕様、API料金として報じられている条件、ローカルで試す際の環境と手順、向いている用途・向かない用途を整理します。
LFM2.5-24B-A2Bの要点
LFM2.5-24B-A2Bは、Liquid AIのLFM2.5シリーズで大きめの推論モデルです。公式ブログでは、オンデバイスで高速に動くプライベートなエージェント向けモデルとして説明されています。発表内容はLiquid AI公式ブログとLiquid Docsで確認できます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| モデル名 | LFM2.5-24B-A2B |
| 提供元 | Liquid AI |
| 公開日 | 2026年10月13日 |
| モデル種別 | テキスト専用の推論モデル、MoE |
| パラメータ | 総24B、アクティブ約2B級 |
| コンテキスト長 | 131,072トークン |
| 主な実行環境 | llama.cpp、MLX、vLLM、SGLang、ONNXなど |
| 公開場所 | Hugging Faceのモデルページ |
MoEはMixture of Expertsの略で、モデル全体のパラメータを毎回すべて使うのではなく、入力に応じて一部の専門家ネットワークを使う方式です。LFM2.5-24B-A2Bの場合、総パラメータは24Bですが、推論時に有効になる計算量を抑えることで、ローカル実行や低コストな推論を狙っています。
公式情報では、LFM2-24B-A2Bからの主な変更点として、コンテキスト長が32Kから131Kへ拡大し、語彙数も65Kから128Kへ増えたと説明されています。非ラテン文字の扱い改善も目的に含まれるため、日本語の長文処理でも注目したい変更です。
何が新しいのか:ローカルAIエージェント向けに寄せている
このモデルの特徴は、単なるチャット性能よりも、エージェント用途を前提にしている点です。公式ブログでは、ツール利用やエージェントワークフローを含むベンチマークで比較評価したと説明されています。ただし、速度やベンチマーク値はLiquid AI側の測定値であり、第三者の同一条件レビューとは区別して見る必要があります。
Hugging Faceのモデルページでは、Apple M5 Maxで184 tokens/s、AMD Ryzen AI Max+ 395で114 tokens/sという速度が示されていますが、これはLiquid AIの測定基盤、llama.cpp、Q4_K_M量子化、4Kトークン入力などの条件付きです。実際の速度は、量子化形式、メモリ量、コンテキスト長、CPU/GPUの使い方で大きく変わります。出典はHugging Faceのモデルカードです。
もう1つの注意点は、LFM2.5-24B-A2Bが推論専用の挙動を持つことです。Liquid Docsでは、各アシスタント応答が<think>タグで始まり、回答前に推論トレースを生成する旨が説明されています。アプリに組み込む場合は、ユーザーに見せる最終回答と内部の推論部分をどう扱うかを設計しておく必要があります。
用途別:向いている使い方、向かない使い方
LFM2.5-24B-A2Bは、クラウドAPIを完全に置き換えるモデルというより、ローカルで処理したいエージェント処理に向いています。特に、社内文書やローカルファイルを参照しながら、決められた手順を実行する用途と相性があります。
| 用途 | 向き不向き | 理由 |
|---|---|---|
| 社内文書の要約・検索補助 | 向いている | 長いコンテキストとローカル実行の相性がよい。ただしRAG設計は必要 |
| ツール呼び出し型エージェント | 向いている | 公式がエージェントワークフロー向けに訓練・評価している |
| 個人PCでのオフライン下書き | 条件付きで向く | 量子化版なら試しやすいが、メモリに余裕が必要 |
| 最新情報の調査 | 単体では不向き | モデル単体では最新Web情報にアクセスできない |
| 高精度な専門知識QA | 単体では注意 | 知識系は検索、RAG、検証フローと組み合わせるべき |
| 本格的なコード修正エージェント | 検証が必要 | 公式比較でも用途により大規模モデルが有利な領域がある |
実務で使うなら、最初から「何でも質問できる社内ChatGPT」を目指すより、議事録要約、社内規程の確認、ローカルファイルの分類、定型レポート作成、チケットの一次分類のように、入力と出力を限定したタスクから始めるのが安全です。
API料金:Liquid ConsoleとOpenRouterで条件が異なる
LFM2.5-24B-A2Bはローカル実行だけでなく、API経由でも利用できます。PC Watchの報道では、Liquid ConsoleのAPI料金は100万トークンあたり入力0.10ドル、キャッシュ入力0.05ドル、出力1ドルとされています。料金は変更される可能性があるため、利用前にLiquid Console側で最新条件を確認してください。出典はPC Watchの記事です。
| 提供経路 | 入力 | 出力 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| Liquid Console | 100万トークンあたり0.10ドルと報道 | 100万トークンあたり1ドルと報道 | 公式コンソールで最新確認が必要 |
| OpenRouter | 100万トークンあたり0.05ドル | 100万トークンあたり0.70ドル | ルーティングサービス側の料金。条件変更に注意 |
| ローカル実行 | API従量課金なし | API従量課金なし | PC、電力、運用、初期設定のコストがかかる |
OpenRouterのモデルページでは、LFM2.5-24B-A2Bの料金として入力100万トークンあたり0.05ドル、出力100万トークンあたり0.70ドル、キャッシュ読み取り0.025ドルと表示されています。出典はOpenRouterの料金ページです。
例えば、Liquid Consoleの報道値を前提に、入力100万トークン、出力10万トークンを使う処理なら、概算は0.10ドル+0.10ドルで0.20ドルです。これは為替、最低課金、税、キャッシュ利用、プロバイダー側の変更を考慮しない単純計算です。
選び方としては、少量の検証やWebアプリへの組み込みはAPIが楽です。一方で、機密性の高い文書を扱う、ネットワークに出せない、繰り返し大量に処理する、レイテンシを安定させたい場合はローカル実行を検討する価値があります。
ローカル実行に必要な環境の考え方
必要環境は、モデル形式、量子化、コンテキスト長、GPUオフロード量で変わります。公式ページではllama.cppやMLXなど複数の実行経路が示されていますが、「どのPCでも快適に動く」という意味ではありません。
| 環境 | おすすめの試し方 | 補足 |
|---|---|---|
| Apple Silicon Mac | MLX版またはllama.cppのGGUF版 | ユニファイドメモリに余裕があるほど扱いやすい |
| Windows / Linux + GPU | llama.cpp、vLLM、SGLang | VRAM不足時は量子化やCPU併用を検討 |
| CPUのみ | 短い入力で動作確認 | 実用速度は期待しすぎない方がよい |
| サーバー運用 | vLLM、SGLang、ONNX | 同時実行数や監視を含めて設計する |
実務目線の目安として、16GB級のメモリでは余裕が少なく、量子化モデルでもコンテキストを伸ばすとKVキャッシュで詰まりやすくなります。短いプロンプトで試すだけなら軽めの量子化版から始め、業務利用を考えるなら32GB以上、長文処理や複数プロセスを考えるならさらに余裕のある環境を検討するとよいでしょう。
131Kトークン対応は魅力ですが、常に最大長で使うべきという意味ではありません。コンテキストを大きくするとメモリ消費と処理時間が増えます。最初は4K〜8K程度で動作確認し、必要なタスクだけ16K、32K以上へ広げる方がトラブルを減らせます。
動かし方:まずはGGUF版かMLX版で試す
ローカルで試すなら、最初はHugging Faceのモデルページから利用形態を選びます。一般的には、llama.cppで使いやすいGGUF版、Apple Siliconで扱いやすいMLX版が入り口になります。GGUF版はLiquidAI/LFM2.5-24B-A2B-GGUFで公開されています。
llama.cppで試す流れ
以下は手順のイメージです。ファイル名や量子化形式はHugging Face上で確認し、自分のメモリに合うものへ置き換えてください。筆者による実測ではなく、導入時の流れを示すための例です。
git clone https://github.com/ggerganov/llama.cpp.git
cd llama.cpp
cmake -B build
cmake --build build --config Release
# Hugging Face CLIを使う場合の例。実際のファイル名はモデルページで確認してください。
huggingface-cli download LiquidAI/LFM2.5-24B-A2B-GGUF \
LFM2.5-24B-A2B-QAD-Q4_0.gguf \
--local-dir ./models/lfm25
./build/bin/llama-cli \
-m ./models/lfm25/LFM2.5-24B-A2B-QAD-Q4_0.gguf \
-c 4096 \
-n 512 \
-p "社内FAQの下書きを作ってください。条件: 箇条書き、根拠が不明な点は不明と書く。"
うまく動かない場合は、まずコンテキスト長を小さくし、より軽い量子化ファイルを選び、GPUオフロード設定を調整します。最初から131Kコンテキストで起動しようとすると、メモリ不足の原因になりやすいです。
MLXで試す流れ
Apple Silicon環境では、Liquid DocsにMLX向けの例が掲載されています。モデル名としてLiquidAI/LFM2.5-24B-A2B-MLX-4bitを読み込む例が示されています。詳細はLiquid Docsのモデルページを確認してください。
pip install mlx-lm
python -c "from mlx_lm import load, generate; model, tokenizer = load('LiquidAI/LFM2.5-24B-A2B-MLX-4bit'); print(generate(model, tokenizer, prompt='日本語で短く自己紹介してください。', max_tokens=200))"
実行できたら、次に業務タスクに近い短い入力で試します。例えば「契約書の確認」や「顧客対応文の生成」をいきなり任せるのではなく、公開可能なダミー文書で、要約、論点抽出、チェックリスト化のような低リスクな処理から始めるのが安全です。
つまずきやすいポイントと対処
メモリ不足で起動しない
最も多い原因は、モデル本体、KVキャッシュ、GPUオフロード、同時実行数を合計したメモリが足りないことです。対処としては、軽い量子化版を選ぶ、コンテキスト長を下げる、同時実行を減らす、GPUに載せる層数を調整する、といった順で試します。
長文を入れると遅くなる
131Kトークン対応でも、長文入力は処理が重くなります。社内文書を扱う場合は、全文を毎回投げるのではなく、検索やRAGで関連箇所だけを渡す設計が重要です。長いコンテキストは「保険」として使い、常用サイズは小さく保つ方が安定します。
<think>を含む出力の扱いに迷う
LFM2.5-24B-A2Bは、回答前に推論トレースを出す設計です。社内アプリでは、ユーザーに見せる最終回答、ログに残す情報、保存しない情報を分けて設計してください。特に機密文書を扱う場合、推論トレースのログ保存が情報漏えいリスクにならないか確認が必要です。
ライセンス条件を見落とす
Hugging FaceではLFM Open License v1.0のもとで公開されています。PC Watchの報道では、基本的に無償利用・商用利用可能としつつ、年間売上高が1,000万ドル以上の企業による商用利用では商用ライセンス取得が必要とされています。業務利用前に、必ずHugging Faceのライセンス表示と自社の利用条件を確認してください。
結論:クラウド依存を減らすエージェント基盤として試す価値がある
LFM2.5-24B-A2Bは、ローカルで高速なAIエージェントを動かしたい開発者にとって、試す価値のあるモデルです。特に、長い文脈、ツール呼び出し、プライバシー重視の処理を組み合わせたい場合に候補になります。
一方で、最新知識の調査、専門的な正確性が必要な回答、長大コンテキストでの安定運用は、モデル単体ではなく検索、RAG、検証、ログ設計とセットで考えるべきです。まずはGGUF版かMLX版を短いコンテキストで起動し、自分のPCで速度とメモリ使用量を確認するところから始めるのが現実的な一歩です。

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